兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

猫の「年齢」と「猫種」から読み解く

皆さんこんにちは

グリーンピース動物病院の更新担当の中西です

 

 

さて今回は

~猫の「年齢」と「猫種」から読み解く~

 

猫の健康管理は「現在の状態」だけでなく、**年齢(ライフステージ)猫種(遺伝的背景・体型)**を前提に考えると精度が大きく上がります。本稿では、臨床での観察ポイントを軸に、年齢別の身体変化・疾患リスク、主要猫種の身体的特徴と特有リスク、検診・栄養・運動・生活環境の調整指針までを体系的に解説します。


年齢からみる身体的特徴と注意点

1. 幼猫期(0〜6か月)

  • 身体的特徴:骨格・筋肉・神経発達が急速。体温調節が未熟、脱水に弱い。乳歯から永久歯へ交換(生後3〜6か月)。

  • 臨床上の要点

    • 低血糖・脱水の早期進行に注意。

    • ワクチン、寄生虫対策、早期の社会化。

    • 栄養は高エネルギー・高消化性。カルシウムとリンの比率(Ca/P)を適正に。

2. 若齢期(7か月〜2歳)

  • 身体的特徴:成長完了。性成熟・行動の活発化。

  • 臨床上の要点:避妊去勢後は代謝低下と食欲増進のギャップで体重増加を招きやすい。2〜4週間で給餌量の微調整が必要。

3. 成猫期(3〜6歳)

  • 身体的特徴:代謝は安定。筋量維持がQOLを左右。

  • 臨床上の要点:歯周病や下部尿路疾患(FLUTD)の初発が増える。ストレスやトイレ環境を整え、体重・飲水量・排尿習慣の定期チェック。

4. 中高齢期(7〜10歳)

  • 身体的特徴:基礎代謝の低下、脂肪量増加、筋量緩徐低下。

  • 臨床上の要点:慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症、関節疾患のスクリーニングを開始。年1〜2回の血液・尿検査、血圧測定を推奨。

5. シニア期(11歳以上)

  • 身体的特徴:サルコペニア(筋肉減少)、感覚低下、認知機能の変化。食欲と嗜好の変動、脱水傾向。

  • 臨床上の要点:体重・筋肉量・水分摂取の細やかな管理。関節痛、認知機能変化、心腎疾患、歯周病の併発に注意。投薬・栄養・環境(段差、保温、夜間照明)を総合調整。


猫種からみる身体的特徴と特有リスク

純血種だけでなく、混血でも親系統の影響が見られることがあります。以下は診療で頻繁に考慮する代表的な特性です。

スコティッシュフォールド/ストレート

  • 体型・特徴:中型、骨軟骨形成の遺伝的要素。

  • 要注意点:骨関節の痛み・可動域制限、尻尾や四肢末端の硬直。若齢でも跛行やジャンプ回避があればX線評価を検討。体重管理と痛み評価が柱。

マンチカン

  • 体型・特徴:短肢。脊椎・関節への負荷が個体差で大きい。

  • 要注意点:段差の少ない環境、爪とぎ位置の低さ、ジャンプの回数を減らすレイアウト。関節痛の早期サインに着目。

ブリティッシュショートヘア

  • 体型・特徴:筋肉質でがっしり。

  • 要注意点:体重過多による関節・心負担。心筋症(HCM)のスクリーニングを年1回以上で検討。

メインクーン

  • 体型・特徴:大型。成長がゆっくり。

  • 要注意点:HCMリスクの評価、関節・股関節の管理。給餌はゆるやかな成長曲線を意識。

ノルウェージャンフォレスト/サイベリアン

  • 体型・特徴:長毛・二重被毛。

  • 要注意点:毛球症予防に整毛・繊維設計。体表観察が難しいため体重・触診での被毛下の筋量評価を重視。

ペルシャ系(チンチラ含む)

  • 体型・特徴:扁平顔(短頭傾向)、長毛。

  • 要注意点:涙やけ、鼻涙管狭窄、歯列不整。眼・鼻の毎日ケア、歯科検診の頻度を上げる。

シャルトリュー/ロシアンブルー

  • 体型・特徴:引き締まった中型、被毛密。

  • 要注意点:ストレス感受性の高さが見られる個体も。環境変化は段階的に。膀胱炎予防に飲水施策。

ラグドール

  • 体型・特徴:大型で温和。抱き上げに力が抜けやすい。

  • 要注意点:肥満管理、HCMのスクリーニング。被毛ケアで皮膚トラブル予防。

アビシニアン/ソマリ

  • 体型・特徴:スリムで活発。

  • 要注意点:高活動に見合うエネルギーと環境エンリッチメント。消化器の敏感さがみられる個体は食事の変更を段階的に。

ベンガル

  • 体型・特徴:筋肉質・高活動。

  • 要注意点:運動・探索環境の不足による問題行動とストレス関連疾患の予防。高たんぱく高消化性の栄養設計。

スフィンクス

  • 体型・特徴:無毛〜短毛。体温喪失が早く、皮脂管理が難しい。

  • 要注意点:保温・皮膚清拭・皮脂バランスの維持。紫外線対策。


年齢 × 猫種で変わる実務ポイント

1) 体重・筋肉量(BCS/MCS)の評価

  • 長毛種や大型種は見た目での肥満・痩せの判定が難しいため、触診(肋骨・腰背筋)と体重推移を併用。

  • シニア期は筋量の維持を最優先。高消化性のたんぱく質と適度な運動、段差・高さを安全に使える環境を整える。

2) 心臓のスクリーニング

  • メインクーン、ラグドール、ブリティッシュなどは**心筋症(HCM)**の家系的素因を考慮し、年1回以上の聴診・心エコー(必要に応じ)を検討。

3) 関節・骨格

  • スコティッシュ、マンチカンは若齢でも関節痛が潜むことがある。段差の最適化、体重管理、痛み評価スケールをルーチン化。

  • 大型種や高齢猫は滑りにくい床材、高低差の緩やかな導線に。

4) 皮膚・被毛・口腔

  • 長毛種は毛球症対策(整毛・繊維・水分)。

  • 扁平顔では涙やけ・呼吸の細やかなケア。

  • 全猫種で歯周病対策(定期スケーリング、在宅歯みがき導入)。加齢で歯根病変の発生率が上がる。

5) 泌尿器

  • ストレス感受性の高い個体・長毛で飲水が少ない個体はFLUTDリスクが上がる。飲水デザイン(循環式給水器、器の材質・設置数)、トイレ環境最適化(頭数+1台、清潔、静寂)。


栄養・運動・環境の調整

栄養

  • 年齢別:幼猫は高エネルギー・高消化性。成猫は体重維持を基軸。シニアは腎・関節・口腔の状態に合わせて処方。

  • 猫種別:大型種は成長が緩やかなため過栄養に注意。扁平顔は食器の高さ・形状で摂食効率を補助。皮膚に課題のある猫は脂肪酸バランスやたんぱく源に配慮。

  • 共通:急な切替は避け、7日程度で段階移行。水分はウェット併用やぬるま湯で強化。

運動・行動

  • 活動性の高い猫種(ベンガル、アビシニアン)には上下運動と探索の機会を。

  • シニアや関節が弱い猫には緩やかな段差、低めのキャットタワー、滑り止めを導入。短時間の遊びを高頻度に。

環境

  • トイレ:猫数+1、広さと深さは個体の好みに合わせ、砂は継続性重視。

  • ストレス低減:隠れ家・高所・見通しの良い場所を確保。来客・模様替えは段階的に。

  • 保温・保湿:幼猫・高齢猫・無毛種では季節変動に敏感。冬季はベッドの保温、夏季は直射日光と冷房のバランス。


年齢・猫種別の検診プラン(目安)

  • 幼猫〜若齢:月齢に応じたワクチン・寄生虫対策、6か月齢で避妊去勢相談、歯列・乳歯残存のチェック。

  • 成猫(年1回):身体検査、体重・BCS/MCS、口腔・歯科、便・尿の基礎検査。猫種に応じ心エコーなど追加。

  • 7歳以上(年1〜2回):血液検査(腎肝・甲状腺)、尿検査、血圧、歯科評価。HCMリスクがあれば心臓検査を定期化。

  • 11歳以上(年2回以上):上記に加え、認知・関節・体液バランスの評価。投薬・食事・環境の三位一体でアップデート。


ご家庭で見逃したくないサイン

  • 体重変動(±5%以上/月)、被毛艶の低下、毛づくろいの減少

  • ジャンプ回避、階段や高所への躊躇、歩幅の変化

  • 飲水量やトイレ回数・時間の変化、血尿・排尿時の鳴き

  • 食欲の波、丸呑み・食べこぼし、口臭・よだれ

  • 夜間の徘徊、鳴き、睡眠リズムの変化(高齢)


まとめ

猫のケアは「いま目の前の症状」だけでなく、年齢で予測される変化猫種の身体的特性を重ね合わせて設計すると、予防と早期発見の精度が高まります。体重・筋肉量・飲水・トイレ・行動を定点観測し、猫種に応じた心臓・関節・皮膚・歯科の重点領域を定めることが実務の核心です。気になる変化があれば、些細なことでも遠慮なくご相談ください。ご家庭と病院で役割を分担し、猫それぞれの個性と年齢に寄り添うケアを一緒に作っていきましょう。

犬の年齢・体況に合わせた食事コントロール

皆さんこんにちは

グリーンピース動物病院の更新担当の中西です

 

 

さて今回は

~犬の年齢・体況に合わせた食事コントロール~

 

「何をどれだけ食べさせれば良いのか」は、年齢・体格・去勢有無・活動量・持病の有無で大きく変わります。食事は治療そのものでもあり、逆に合わない食事は疾患のリスクを高めます。本記事では、来院時に私たちが実際に行う評価手順と、ライフステージ別・体況別・疾患別の食事設計を体系化して解説します。


食事設計の前提:評価のフレーム

1) 体重・体型(BCS)と筋肉量(MCS)

  • BCS(Body Condition Score):1〜9段階で理想は4〜5。肋骨が軽く触れる、腰にくびれ、上から見て砂時計型。

  • MCS(Muscle Condition Score):側頭筋・肩甲・腰背筋の量を触診。加齢や疾患で痩筋(サルコペニア)が進行していないかを別軸で評価。

2) 活動量と生活環境

  • 室内主体・散歩時間・スポーツ(アジリティ、嗅覚作業)・気温湿度・留守時間。

  • 去勢・避妊後は代謝が低下し食欲が増す傾向があるため、2〜4週間での摂餌量見直しが必須。

3) ライフステージ

  • 成長期(子犬)維持期(成犬)高齢期(シニア)妊娠・授乳期で栄養要件が異なる。

  • 大型犬の成長期は長く、骨成長管理(Ca/P比とエネルギー過多の回避)が最重要

4) 既往歴・内科疾患・薬剤

  • 慢性腎臓病、膵炎既往、肝胆道疾患、消化器疾患、尿路結石、アレルギー、糖尿病、心疾患、甲状腺機能など。


摂取量のベース:必要エネルギーの考え方

1日の基礎計算は**RER(安静時必要エネルギー)**から始めます。
RER = 70 × 体重(kg)^0.75

ここに生活ステージや活動量に応じた係数を掛けて**MER(維持必要エネルギー)**を仮決めします。

  • 成犬・室内飼い:1.4〜1.6 × RER

  • 活動性が高い成犬:1.6〜2.0 × RER

  • 去勢・避妊後の成犬(活動低〜中):1.2〜1.4 × RER

  • 体重減量中:0.8〜1.0 × RER(初期設定、進捗で調整)

  • 成長期(子犬):

    • 体重成長が速い前半:2.0 × RER

    • 成長が落ち着く後半:1.6〜1.8 × RER

  • 妊娠後半(週数に応じて):1.3〜1.6 × RER

  • 授乳期(頭数による):2.0〜3.0 × RER

  • シニア(活動低):1.2〜1.4 × RER

※あくまで出発点。2〜4週間で体重・BCS・MCS・便性状を見て微調整します。


ライフステージ別の栄養設計

A. 成長期(子犬)

  • タンパク質:高消化性・必要量十分(一般に乾物換算で22〜28%目安、品種・製品で差あり)。

  • 脂質:エネルギー源。過剰は肥満・成長板への負荷に。

  • Ca/P比約1.2:1〜1.4:1を維持。特に大型犬の過剰Caは骨関節疾患のリスク

  • DHA/EPA:脳神経・視覚発達に寄与。

  • 給与回数:6か月齢までは1日3回、その後は2回へ。

  • 体重増加速度:急激な増量は避け、月次で理想曲線内を推移。

B. 維持期(成犬)

  • 体重維持と代謝に合わせたエネルギー調整が中心。

  • 去勢・避妊後:同じフードでも給餌量を10〜20%減から開始し、3週間で再評価。

  • 活動犬:脂質エネルギー比の高いフード、運動前の大量一気食いは胃拡張リスクのため回避。

C. シニア(高齢期)

  • MCS維持のため、高消化性で十分な必須アミノ酸を確保。

  • 慢性疾患リスクに応じてリン・ナトリウム・脂質の最適化可溶性・不溶性食物繊維の比率を調整。

  • 関節ケア:体重管理が第一。必要に応じてEPA/DHA、グルコサミン・コンドロイチン配合の処方食。

  • 腎泌尿器:検査値を見ながらタンパク・リンの段階的コントロール。

D. 妊娠・授乳

  • 妊娠前半は維持量、後半から徐々に増量

  • 授乳期は需要が最大。高エネルギーで高消化性、水分アクセスを十分に。1日3〜4回以上へ分割。


体況別の食事コントロール

1) 肥満・過体重

  • 目標体重の設定(現在体重の10〜20%減を段階目標)。

  • 低エネルギー高たんぱく・適正繊維の減量用療法食を使用。

  • 週1回の体重測定月1回のBCS/MCS評価

  • 間食は1日の総カロリーの10%以内、できればゼロへ。

2) 痩せ(低体重)

  • 吸収不良や内分泌疾患を除外。

  • エネルギー密度の高い高消化性フード、1日3回以上の分割。

  • 急な高カロリー導入は下痢の原因、3〜7日で段階移行

3) 胃腸が不安定・便の質に課題

  • **可溶性繊維(発酵性)**で腸内環境を整える処方食、脂質過多の回避。

  • 新しい蛋白源への切替は1〜2週間かけて

  • 長引く下痢・血便は検査で原因精査(寄生虫、炎症、IBD など)。


疾患別の要点(簡易ガイド)

詳細は検査値・病期で変わるため、必ず主治医の指示に従ってください。

  • 慢性腎臓病(CKD)
    早期からリン制限ナトリウム適正高消化性タンパクの質重視。脱水回避のためウェットや水分強化。

  • 膵炎既往
    低脂肪・高消化性、間食の脂質管理。急な食事変更・暴食回避。

  • 肝胆道疾患
    中鎖脂肪酸の活用や高消化性、銅含量の管理が必要なケースも。

  • 糖尿病
    一定の炭水化物量と食後血糖の安定、食事とインスリンのタイミング一貫性。

  • 食物アレルギー/不耐
    加水分解蛋白または新奇蛋白の療法食で8週間の厳格トライアル。おやつ・薬のカプセル原料にも注意。

  • 心疾患
    ナトリウム制限、体重・浮腫・咳のモニタリング、筋量維持。

  • 尿路結石
    結石タイプに応じた尿pH・ミネラル管理と水分強化。勝手な食事戻しは再発リスク。


給餌の実務:頻度・食器・水分・おやつ

  • 給与回数:子犬3回、成犬2回、疾患やシニアで血糖や消化に配慮が必要なら3回以上へ。

  • 食器:浅め・広口で食べやすく、早食いにはスローボウル。

  • 水分:複数箇所に新鮮水、ウェットの併用、ぬるま湯で嗜好性を上げる。

  • おやつ管理:総量の10%以内。しつけはフードの取り分けで代用可。


食事の切り替え手順(失敗しない移行)

  • 1〜2日目:旧:新=75:25

  • 3〜4日目:旧:新=50:50

  • 5〜6日目:旧:新=25:75

  • 7日目以降:新100%
    便が緩む場合は段階を戻し、移行を長めに設定。疾患時は個別計画に従う。


家庭でのモニタリングチェックリスト(週次)

  • 体重、BCS、触って分かる筋肉量の変化

  • 食欲と摂餌時間、食べ方(早食い・残す)

  • 便性状(形・硬さ・回数・色・におい)

  • 飲水量(器の減り、給水器の補充頻度)

  • 活動量・散歩距離・息切れの有無

  • 皮膚・被毛(フケ、艶、かゆみ)

  • シニアや疾患犬は月1回以上の通院モニタリングを推奨


よくある落とし穴

  • 袋の後ろを読まない:カロリー密度は製品ごとに大きく違う。計量スプーン依存は誤差を生みやすい。

  • おやつの積み重ね:小さな一口でも回数で大きなカロリーに。

  • 去勢・避妊後の“据え置き量”:代謝が落ちるのに量が同じ→体重増加。

  • 短期間で結果を求める:減量は毎週0.5〜1.5%の体重減を目安に、数か月単位で。


ケース別・簡易モデルプラン(例)

実際は体重・検査値・嗜好・生活を聞き取り個別処方します。

  • 避妊済み成犬・室内生活・軽運動
    MER=1.3×RER。高消化性・中等度脂質の維持食。1日2回、間食はフード取り分け。月1回の体重・BCS確認。

  • 活動犬(週4のアジリティ)
    MER=1.8×RER。脂質と必須アミノ酸を確保、運動前は軽食または空腹時間を十分とる。水分と電解質の回復を重視。

  • シニア・軽度の腎機能変化
    MER=1.2×RER。リン控えめ・高消化性・適正ナトリウム。ウェット併用で水分強化。3か月毎に血液・尿検査。

  • 減量プログラム
    目標体重設定→0.8〜1.0×RERから開始。高たんぱく・高繊維の減量療法食。週次計測、停滞期は5〜10%追加調整。


受診の目安

  • 2週間以上の体重変動(±5%以上)

  • 慢性的な軟便・嘔吐・食欲低下

  • 被毛の急な艶低下・皮膚トラブル

  • 急な多飲多尿、運動不耐性、咳や呼吸の変化

  • 去勢・避妊後の食欲増進と体重増加が止まらない


まとめ

食事コントロールは「フードの銘柄選び」だけではありません。RER→MERで量を仮決めし、BCS/MCS・活動量・便や被毛の状態で2〜4週間ごとに調整するのが実務の核心です。年齢・体況・疾患に応じた目的別の処方食を使い分け、水分・給与回数・おやつ・運動を含めた総合設計で、長期的な健康とQOLを守りましょう。気になる変化があれば早めにご相談ください。

猫の尿路結石

皆さんこんにちは

グリーンピース動物病院の更新担当の中西です

 

 

さて今回は

~猫の尿路結石~

 

猫の「トイレ問題」は見過ごされがちですが、その裏に**尿路結石(尿石症)が潜んでいることは少なくありません。放置すると激しい痛みだけでなく、特にオス猫では尿道閉塞(おしっこが完全に出ない状態)**により急速に命に関わる危険があります。本記事では、臨床現場でよく遭遇する尿路結石について、サイン(兆候)・特徴・診断の流れ・治療の選択肢・再発予防を体系的に解説します。


尿路結石とは

尿に含まれるミネラルや老廃物が結晶化し、次第に塊(結石)となったもの。発生部位は腎臓・尿管・膀胱・尿道のいずれにも及びます。猫ではとくに**膀胱結石・尿道栓子(結晶や粘液が混ざった栓)**が多く、尿道が細いオス猫に重篤な閉塞が起きやすいのが特徴です。

よく見られる結石の種類

  • ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)
    比較的若〜中年齢の猫にもみられ、尿がアルカリ性に傾く・膀胱炎を併発するなどの条件で形成。栄養管理で溶解可能なことが多い。

  • シュウ酸カルシウム
    中高齢で増加。尿のpHに依存しづらく、溶解食で溶かせないため外科的除去や排石が必要になる場合がある。

  • 尿酸塩(尿酸アンモニウム)・シスチン・キサンチン
    発生頻度は低いが、代謝異常や特定疾患・投薬歴が関与することがある。


飼い主さまが気づける「サイン」(初期〜進行)

尿路結石は**下部尿路疾患(FLUTD)**として似た症状を示すことが多く、結石があるかどうかは検査での確定が必要です。以下のサインが複数当てはまる場合、早期受診をおすすめします。

  1. 排尿姿勢の頻回化
    トイレに何度も出入りするのに、ほとんど出ない、あるいは数滴しか出ない。

  2. 排尿時の痛み
    排尿中・排尿後に鳴く、体を丸める、触られるのを嫌がる。

  3. 血尿・濁った尿・強いアンモニア臭
    砂の色が赤褐色になる、ペットシーツにピンクの染みがつくなど。

  4. トイレ外での排尿
    我慢できずに粗相をする、トイレ滞在時間が長い。

  5. 陰部を過度に舐める
    刺激・痛み・違和感のサイン。

  6. 食欲低下・元気消失・嘔吐
    進行や閉塞に伴う全身症状。特にオス猫では時間単位で悪化することがある。

すぐに救急受診が必要な「赤信号」

  • 何度もトイレに行くのにまったく尿が出ない

  • 腹部が張って痛がる、触ると怒る

  • 嘔吐、ぐったり、低体温
    これらは尿道閉塞の疑いが高く、数時間〜半日で腎不全や高カリウム血症による不整脈・心停止の危険があります。


尿路結石が起こりやすい背景(リスク因子)

  • 性別・体格:オス猫(特に去勢後、肥満傾向)

  • 飲水量の不足:ドライ中心の食事、冬季の飲水低下

  • 食事組成:ミネラルバランス・マグネシウム・カルシウム・リン、尿pHに影響

  • ストレス・環境要因:多頭飼育、トイレ不足、縄張り争い、来客・引っ越し

  • 基礎疾患:慢性腎臓病、代謝異常、先天性要因

  • 年齢:ストルバイトは若〜中年、シュウ酸カルシウムは中高齢に多い傾向


診断の流れ(当院での基本プロトコル)

  1. 問診・身体検査
    発症時期、飲水量、食事、トイレ回数、既往歴、投薬歴、多頭環境などを詳細に聴取。膀胱の触診で尿貯留や痛みを確認。

  2. 尿検査(必須)
    比重、pH、蛋白・潜血、沈渣における結晶の有無、細菌・炎症細胞の確認。尿培養で細菌感染の有無・薬剤感受性評価。

  3. 画像検査

    • レントゲン:シュウ酸カルシウム・ストルバイトなど多くはX線で白く写る。

    • 超音波検査:X線で写りにくい結石(一部の尿酸塩/シスチン)や、膀胱壁の炎症・ポリープ、腎盂拡張などの評価。

  4. 血液検査
    腎機能(BUN/クレアチニン)、電解質(高カリウムの有無)、炎症マーカー等。閉塞の重症度や全身状態を把握し治療方針を決める。


治療方針:状況別のアプローチ

A. 閉塞がない場合(排尿は可能)

  • 疼痛管理・抗炎症

  • 食事療法
    ストルバイトでは溶解食で結石・結晶の溶解を目指す。シュウ酸カルシウムでは溶解不可のため、再発予防に適した維持食へ切り替え。

  • 抗菌薬
    尿培養で細菌性膀胱炎がある場合に適応。

  • 水分摂取計画
    飲水増加の工夫(後述)。

  • 再評価
    2〜4週間ごとの尿検査・画像評価で反応を確認。

B. 尿道閉塞・重度排尿困難がある場合(救急)

  • カテーテルでの閉塞解除
    鎮静下に尿道を洗浄しカテーテル留置、膀胱洗浄。

  • 静脈点滴
    脱水・電解質異常・腎前性因子の是正。

  • 入院管理
    痛みのコントロール、尿量モニタリング、合併症対策。

  • 再発多発例への外科
    尿道狭窄や再閉塞を繰り返すオス猫では、適応を満たせば**会陰尿道瘻形成術(PU手術)**を検討。

C. 膀胱結石が大きい・溶解不能・症状が強い

  • 膀胱切開術
    シュウ酸カルシウムなど溶解不能、あるいはサイズ・形状によっては外科的摘出が第一選択。

  • 尿管結石
    微小な結石でも腎後性腎不全に直結。ステント留置や外科手術(SUBシステム含む)の評価が必要。


再発を防ぐための生活・食事・環境設計

尿路結石は再発率が高い疾患です。治療後こそ、日々の管理が重要です。

1. 水分戦略

  • フードの水分量を増やす:ウェット食の併用、ぬるま湯でのふやかし。

  • 給水器の数と種類:流れる水を好む猫も多い。設置場所を分散。

  • 器の材質・形状・高さ:ヒゲが当たりにくい広口、好みを観察して最適化。

2. 食事設計

  • 獣医師推奨の療法食・維持食を継続。自己判断で市販食へ戻すと再発リスクが跳ね上がる。

  • おやつ・トッピングの一貫性:ミネラルバランスを崩さない。

  • 体重管理:肥満は再発要因。月1回以上の体重モニタリング。

3. トイレ環境の最適化

  • 頭数+1台を目安に複数設置。

  • 清潔・静かな場所に置き、砂は好みに合わせて継続使用。

  • トイレの形状・出入り口高さは高齢猫や関節に配慮。

4. ストレスコントロール

  • 環境変化は段階的に。来客・模様替え・多頭間の緊張に配慮。

  • 高所や隠れ家の確保、遊び・運動で情動安定を図る。


ご家庭でできる早期発見のコツ

  • 排尿日誌:回数・量・時間・トイレ滞在時間を簡単に記録。

  • 色とニオイ:ピンク〜茶色の変化、強い刺激臭に注意。

  • 飲水量:季節やフード変更で増減がないか。

  • 行動変化:陰部を舐める、落ち着きがない、夜間にトイレへ何度も行く。


よくある誤解

  • 「血が混じる=必ず結石」ではない
    膀胱炎(特に特発性)でも血尿は起きます。検査での鑑別が必須。

  • 「一度治ればもう大丈夫」ではない
    食事や環境を戻すと再発しやすく、無症状の“結晶尿”段階でも進行します。

  • 「水さえ飲めば防げる」わけではない
    飲水は重要ですが、結石の種類に合った食事管理と総合的な環境調整が必要です。


再診・モニタリング計画の目安

  • 急性期後:2〜4週間で尿検査(pH・比重・沈渣)、必要に応じて画像再評価。

  • 安定期:3〜6か月ごとに尿検査、体重・BCS(ボディコンディションスコア)チェック。

  • 再発既往:季節の変わり目やストレスイベント前後で臨時チェック。


受診のタイミング

  • サインが複数当てはまる、もしくは1つでも悪化傾向があれば早めに受診。

  • 上述の赤信号(尿が出ない、強い痛み、嘔吐・ぐったり)は即日救急へ。


まとめ

猫の尿路結石は、サインが見えづらい初期段階から適切に拾い上げ、検査で確定診断を行い、結石の種類に応じた治療と再発予防を継続することが鍵です。特にオス猫の尿道閉塞は時間との勝負になります。トイレ行動の変化に気づいたら、無理せず早めにご相談ください。
ご家庭では水分摂取・療法食の継続・トイレ環境とストレス管理を柱に、動物病院では定期的な尿検査・画像評価を組み合わせることで、痛みの少ない暮らしを長く支えることができます。

高齢猫ちゃんの原因不明発熱

皆さんこんにちは

グリーンピース動物病院の更新担当の中西です

 

 

さて今回は

~高齢猫ちゃんの原因不明発熱~

高齢の猫が「熱っぽい」「元気がない」「食欲が落ちた」という状態で来院されることは珍しくありません。原因がすぐに特定できない発熱(不明熱)の場合、検査の組み合わせや解釈、治療の優先順位づけが大切です。本記事では、当院に寄せられた実際の症例をもとに、不明熱へのアプローチを整理します。


症例の概要

  • 12歳6か月、去勢済みのオス

  • 品種:スコティッシュストレート

  • 初診時体温:40.2℃、著しい活力低下と食欲不振
    本症例は、複数の病院を受診しながらも原因がつかめず、検査結果の解釈にも幅がありました。


受診までの経緯と初期対応のポイント

1軒目の病院では発熱から「猫風邪」と判断され解熱剤で一時的に改善。しかし翌日に再発。2軒目ではレントゲン・超音波・血液検査の結果、腹水や小さな腎結石、腸管内の結石様所見が見つかったものの「原因不明」とされ、CTや開腹手術を提案されました。再度1軒目でFIP(猫伝染性腹膜炎)疑いとされ、コロナ抗体検査を外注、抗生剤と解熱剤の注射が行われました。

ここでの学び

  • 高齢猫の発熱は「上部気道炎=猫風邪」だけでは説明できないことが多く、画像検査や体腔液の評価を含む系統立てた鑑別が必要です。

  • 一時的な解熱は「原因の解決」を意味しません。再発は追加検査のサインです。


追加検査:腹水検査が示したもの

高度医療機関での再評価では、X線・エコー・血液検査に加え、腹水の採取・評価が行われました。血液検査では軽度黄疸、リパーゼ・LDH高値、炎症マーカーSAAが150超(基準6以下)と著明高値。腹水は比重が高く、どろっとした滲出液で炎症細胞が豊富でした。ただし腹水のコロナウイルス遺伝子検査は陰性で、「FIPではない」との判断が提示されました(同日にレムデシビル投与の記録あり)。

ここでの学び

  • 体腔液の性状は病態を大きく絞り込みます。滲出液+高SAAは強い炎症を示唆。

  • 遺伝子検査は強力な武器ですが「陰性=完全否定」ではありません。検査には感度・特異度の限界があり、検体の採取部位・タイミング・病勢によって結果が左右されることがあります。


鑑別診断の整理

  • FIP(猫伝染性腹膜炎):腹水の性状や炎症所見から強く示唆。ただし遺伝子検査は陰性。

  • 重度の非特異的炎症(膵炎など):高リパーゼや強い炎症反応から候補。

  • 腫瘍性疾患:高齢である点から鑑別に挙げるが、即断は不可。

  • 細菌性腹膜炎/消化管由来の合併症:画像所見や臨床経過と突き合わせながら検討。
    これらを“総合”して、当面は「強い炎症に対するコントロール」を優先する方針となりました。


初期治療と反応

強力な抗炎症薬(膵炎での使用が認可、犬猫の重度炎症に実績のある注射薬)を皮下投与。食べられていないため皮下補液(乳酸リンゲル)を併用し、抗生剤の内服を処方しました。中1日で再診したところ、活力と食欲は回復傾向、体温は39.3℃→翌日39.1℃に低下。経過は良好でした。

ここでの学び

  • “原因探索”と“全身状態の安定化”は両輪。重症化を防ぐため、循環・栄養・炎症のコントロールを優先することがあります。

  • 反応が良い=完治ではありません。寛解と再燃を繰り返すこともあり、計画的なモニタリングが欠かせません。


今後の方針

  • 寛解が続くかを慎重に観察し、再発や悪化があれば大学病院への紹介を検討。

  • 検査結果の「陰性」を過信せず、臨床所見・画像・体腔液・経過を重ね合わせてFIPを含む鑑別を継続。

  • 飼い主さまと情報を共有し、治療の選択肢(支持療法・抗炎症治療・抗ウイルス薬の適応評価・侵襲的検査の是非)を段階的に検討します。


飼い主さまへのアドバイス

  1. 「熱が下がった=治った」ではありません。 再発が多い場合は追加検査が必要です。

  2. 検査は組み合わせが重要。 血液・画像・体腔液の結果を総合して診断精度が高まります。

  3. 陰性結果の解釈に注意。 特に感染症の遺伝子検査は、採材や病期で鋭敏さが変わることがあります。

  4. 通院頻度とモニタリング。 体温・食欲・元気度・呼吸状態・排泄の変化は、早期悪化のサインです。小さな変化も共有してください


まとめ

高齢猫の不明熱は、単純な上部気道炎では説明できないことが多く、**腹水の性状評価や炎症マーカー(SAA)**を含めた総合判断が鍵になります。本症例では、強力な抗炎症治療と補液・抗菌薬の併用で臨床的に改善が得られましたが、根本原因の確定には引き続き慎重な観察と再評価が必要です。気になる症状があれば、早めにご相談ください。

 

柴犬の痒みを伴う皮膚炎

もうすぐ7才になる柴犬の男の子の話しです。

4ヶ月前から最初は背中の皮膚が痒くなって毛が抜けて来たという事で、最初は近医に受診して。
抗生物質とステロイドホルモンで最初とその次の月は10日間治療して。3ヶ月目には20日間治療して。ある程度良くなったので休薬したら、痒み脱毛がみるみるひどくなって来たということで当院に受診されたものです。

初診時の皮膚の状態を見てみましょう。

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こんな感じでした。

こういう症例には、痒みを伴う犬の皮膚炎の原因として、一般的な7つの原因である、
細菌感染、皮膚糸状菌感染、マラセチア感染、疥癬症、毛包虫症、食物性アレルギー、アトピー性皮膚炎をひとつひとつ除外して行くしかありません。

初日にやった検査は、皮膚の細菌培養と薬剤感受性試験、皮膚糸状菌の培養、日本全薬工業がやっているチリダニグループ2アレルゲンIgE抗体検査(いわゆるアトピー体質の検査)の3種類です。

初日の治療をしては、アトピー性皮膚炎の特効薬である強力な痒みを抑える分子標的薬ととりあえずの抗生物質、皮膚に住む疥癬と毛包虫を駆除できる滴下剤の処方をやりました。

翌日からは、薬剤感受性試験に基づく適切な抗生物質の投与を行ないます。この時点で皮膚の痒みはかなり改善していて、掻く回数が激減していました。

来院1週間後には皮膚糸状菌培養結果が陽性になっていましたので、血液検査を実施して内臓機能が正常であることを確認した上で経口抗真菌薬を処方すると共に、抗真菌剤入りシャンプーとセラミド入り皮膚保湿剤の滴下を週に1回実施するよう指示します。

日本全薬のアトピー体質検査の結果は11日後に報告がありまして、抗体価ワンプラスという結果でしたので。3回目来院時に飼い主様に説明しました。

飼い主様曰くは、治療前どことなく元気が無い感じだったのが、最近は元気はつらつという感じになったとのことでした。

ここまで来たら、後は皮膚が正常になるまで治療を続けるだけです。

初診から1か月半で、皮膚被毛の状態はほぼ正常に回復しました。血液検査のデータも正常で、抗真菌経口剤による肝障害も生じておらず。皮膚糸状菌の培養検査も培養9日目でも全然生えて来ていませんから、皮膚のカビも退治出来たと思います。

ここで、初診時と治療1か月半の皮膚被毛の状態をビフォー&アフターの画像で比較してみたいと思います。

ビフォー

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アフター

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ビフォー

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アフター

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ビフォー

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アフター

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ビフォー

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アフター

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治療効果がはっきりと判ると思います。

今後は、アトピー性皮膚炎の治療薬の痒みを抑える分子標的薬を内服して、保湿シャンプーと保湿剤の滴下で管理出来ると思いますが。冬季には治療を休んでも大丈夫かも知れません。

飼い主様もすごく喜んでいました。お力になれて私たちも嬉しいです。

ではまた。

 

 

 

犬の健康管理(子犬の病気予防)子犬を飼われた方は是非お読み下さい。

犬の健康管理 子犬の病気予防

犬の健康管理一般を、一部には子犬を繁殖する場合や子犬を入手した場合も含めてまとめてみました。記憶に残りやすいように画像も掲載したいのですが。整理が悪くて思うに任せません。おいおい追記していきます。

 

混合ワクチン

犬の感染症予防ワクチンは、通常は何種類かのワクチンをブレンドした混合ワクチンとして注射で行います。最近はケンネルコフ(犬舎風邪)対策に点鼻ワクチンも存在しますが。まだ一般的ではありません。

混合ワクチンには、3種、5種、7種、8種と様々なバリエーションがありますが。

犬にとって感染すると致死的な結果になる重要な疾病でワクチンが必要な物は。ジステンパー、パルボウィルス感染症、犬伝染性肝炎、にレプトスピラ感染症です。

一般的に使用されているワクチンには、飼い馴らして病気を起こさなくした生きたウィルスを注射する生ワクチンと、病原体をホルマリンで殺してその死体を注射する不活化ワクチンとがあります。

感染症のワクチンは、子犬が初乳で母親からもらっている移行免疫が多く残っていると効力が発揮できないとされていて。移行免疫が消失し始める生後2ヶ月令から接種することが奨励されていましたが。

最近ではワクチンの性能が飛躍的に改善されて、生後28日で接種しても移行免疫を乗り越えて効果を発揮するワクチンが使われるようになっています。

従って、私が推奨している子犬の健康管理プログラムは、生後3週間で検便と虫下し、4週間(28日令)で最初のワクチン(この時はレプトスピラを含まない5種混合ワクチン)と駄目押しの検便と虫下しを実施して。

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2回目のワクチンはそれから3週間経過した生後7週令(49日令)で7種か8種混合ワクチンを接種して。

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子犬を譲渡する際にはそれから1週間経過して8週令で引き渡します。

ワクチンが効力を発揮するためには、子犬の側の免疫機能が正常に働いていることが重要ですが、幼い子犬を母親から離したり、全く新しい環境に移動させたりすると、子犬は強いストレスに曝されるわけで、その際に子犬の副腎から大量の副腎皮質ホルモンが分泌されます。副腎皮質ホルモンは免疫反応を阻害する働きを持っていますので。ワクチンの効果も阻害される可能性があります。

3回目のワクチンは、新しい飼い主の元に行って2週間経過した時(この時点で2回目から3週間経過しています)に実施しますが。この時にお勧めしているのがワクチン抗体価検査です。これは1mlくらい採血して、血漿を分離し、検査センターに送ってジステンパー、パルボ、伝染性肝炎に対する抗体価を測定するというものです。同時にレプトスピラのワクチンは2回目を接種します。

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レプトスピラワクチンを他のワクチンよりも遅くに接種するのは、古い知識ですが、生後2ヶ月令以前にレプトスピラワクチンを接種すると副作用が出やすいという記事を読んだ事があるからです。

ワクチン抗体価検査の結果は、検査センターに依頼して約1週間で返って来ますので。その結果によって外へのお散歩デビューが出来るかどうか判定されます。犬ジステンパー、犬パルボウィルス、犬伝染性肝炎のいずれかの抗体価が十分に上がっていない場合には、5種混合ワクチンを追加接種して、さらに3週間後に再度抗体価検査を実施することをお勧めします。

抗体価が十分に上昇している子犬は、外にお散歩デビュー可能になる他、前回のワクチン接種から1ヶ月経過した時点で狂犬病予防注射と畜犬登録を実施します。

 

狂犬病予防注射

狂犬病とは、ラブドウィルスというウィルスによる全哺乳類が感染する致死的な病気で。日本、ニュージーランド、オーストラリア、北欧の数ヶ国以外のほぼ全世界で蔓延している脳神経を破壊する病気です。発症すると治療法が無くてほぼ全症例死亡します。特にアジアアフリカの発展途上国では人間の被害が深刻な問題になっています。我が国では昭和29年に狂犬病予防法が施行されて、現在は猟犬を含めて全ての飼い犬には狂犬病予防法に基づく畜犬登録と毎年1回の狂犬病予防注射が義務付けられていて、厳しい罰則もあります。

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子犬の混合ワクチンと狂犬病予防ワクチンについては以上ですが。2年目以降の成犬は前回のワクチンから1年経過した時点で混合ワクチンを、春の4月から6月までの間にその年度の狂犬病予防注射を続けて行く必要があります。

 

犬フィラリア予防

犬フィラリア症とは、ディロフィラリア・イミティスという学名の素麺のような寄生虫が、蚊によって媒介されてイヌ科の動物や猫の心臓に寄生することによって生じる循環器疾患です。予防法の無かった昭和の半ばまでは、この病気のために屋外飼育の犬は5才とか6才で苦しそうな咳をしたり腹水が溜まったりして数ヶ月から1年くらいで死ぬことが普通でした。また急性症状が出た時には激しい咳と呼吸困難、赤黒い尿を排泄して1週間から10日くらいでやはり死んでしまいました。

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犬のフィラリアが心臓に寄生しているイメージのオブジェです。

 

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急性フィラリア症になってしまった犬の頸静脈からフィラリア虫を釣り出しているところです。

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フィラリア釣り出し術で取り出したフィラリア成虫のホルマリン漬け標本です。

 

現在は内服薬、注射薬、皮膚に滴下する滴下剤などの様々な予防薬が使用されるようになって、犬フィラリア症はほとんど見られることは無くなりましたが。それでも知識不足の飼い主に飼われた犬には寄生が発見されることがあります。


当院で処方しているフィラリア予防薬です。向かって左からノミマダニ駆除薬とフィラリア予防薬合剤のネクスガードスペクトラ。真ん中が食べさせるタイプのイベルメックチュアブル。右がミルベマイシン錠です。

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犬フィラリア予防で重要な事は、予防薬を与える期間です。1年に1回の注射以外のほとんどのフィラリア予防薬は、1ヶ月前に蚊に刺されて体内に入ったフォラリア虫の幼虫が成虫にならないようにまとめて虫下しをかける感覚で使用されるものでして。蚊の吸血が始まってから1ヶ月後から月に1回与え始めて、最後の蚊の吸血から1ヶ月後まで与え続けることが必要です。

従って、関東から以西の本州では5月末から投薬を始めて、最終が12月末に最後の投薬をする事になります。沖縄辺りでは年中投薬しなければならないでしょうし。

最近は温暖化で投与期間は地方によっていろいろ変化している可能性がありますので。具体的にはそれぞれのかかりつけ獣医師の指示に従ってください。

 

ノミマダニ予防

ノミは気温が高くなる夏場に、野良猫が住んでいる地域であれば、路上で繁殖するようになりますから、犬を散歩させると成虫が飛びついて来て寄生します。いったん寄生されると、犬の皮膚から吸血したノミはすぐに産卵を始めて、生まれた卵は犬が生活している犬舎で犬の皮膚から落ちるフケなどの有機物を食べて成長しますので、犬舎全体がノミの巣になってしまいます。

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製薬会社作成のノミの成長サイクルをイメージしたオブジェです。

ノミに寄生されると、ノミアレルギー皮膚炎になってひどく痒いだけでなく、ノミを介する瓜実条虫というサナダムシの一種が腸管に寄生して栄養を横取りしますので、犬が痩せて来たり下痢をするようになってコンディションが悪くなります。

マダニは山野に生息していて、犬だけでなく人間にも食い付いて来て吸血する害虫で、初夏から秋口までが活動活発ですが。真冬でも少し日当たりが良い藪では寄生して来ます。

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マダニの一種のフタトゲチマダニの模型です。

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生きたマダニはこんな感じです。

マダニの害は、吸血部位が腫れてひどい痒みが数ヶ月続くだけでなく。マダニ媒介性のバベシア症という貧血を起こす寄生虫疾患やウィルス性の重症熱性血小板減少症などの致死性の感染症の原因となります。

最近ではノミやマダニの駆除薬は便利で有効な製品が開発されています。剤形も皮膚に垂らす滴下剤もあれば内服薬もあります。

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マダニ駆除薬です。左が滴下剤のフィプロスポットプラスでフロントラインのジェネリック。真ん中がフィラリア予防薬との合剤のネクスガードスペクトラ。右が食べさせるタイプのブラベクト錠です。

ここ数年前から発売されているノミマダニ駆除内服薬は、安全性有効性高い薬がそろっていますが。

私が知る限りでは、繁殖犬に対する安全性試験までやっている駆除薬は、内服後3ヶ月間有効なブラベクトという製品だけであって。それ以外の駆除薬は内服剤も滴下剤も繁殖に使用する犬には与えないようにという但し書きが添付されています。

 

消化管寄生虫対策

消化管内寄生虫とは、いわゆるお腹の虫のことですが、子犬で頻繁に見つかるのは犬回虫とコクシジウムです。それ以外には犬鉤虫、犬鞭虫、マンソン裂頭条虫、広節裂頭条虫など多くの寄生虫が犬のお腹を狙っているわけです。

 

子犬では母犬から胎盤を通じて出産前に回虫が感染している可能性があります。離乳食を始める時やワクチン接種の時にこまめに検便を実施して虫が見つかれば駆虫する必要があります。

成犬の場合、少なくとも年に1回は、例えばワクチン接種や狂犬病予防注射の機会に動物病院に便を持参して検便を行なう必要があります。検便の方法にも浮遊集虫法、遠心沈殿法、直接塗抹法などのいろいろな方法があって、それぞれに発見可能な寄生虫の種類が違います。

猟犬の場合には、水辺の生き物を食べることによって感染するマンソン裂頭条虫や広節裂頭条虫の寄生が重要です。 裂頭条虫類の虫卵は直接塗抹法か遠心沈殿法でないと見つけることは出来ませんので、少なくとも直接塗抹法と浮遊法の2種類の方法で検便してくれるかどうかを確認して検便してもらった方が良いと思います。

なお、寄生虫にはそれぞれ専用の駆虫剤を使用しないと駆除が出来ません。犬の虫下しとして薬局などで市販している薬は、犬回虫くらいしか駆虫出来ませんので注意して下さい。

 

~犬のマイクロチップ~

マイクロチップとは小さな電子機器で、犬の皮下に専用の注射器で装着します。この機器自体は電波を発信するものではないですが、読み取り機を近づけてスイッチを入れると、読み取り機の問いかけに反応して読み取り機に機器固有の番号が表示されます。

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マイクロチップのサンプルです。サンプルは樹脂に封入されています。

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読み取り機です。

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犬の首の皮下に入っているチップを読み取っているところです。

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番号は読み取り機のウィンドウに表示されます。

マイクロチップ挿入後この番号を日本獣医師会の情報センターに登録しておくことにより、様々な理由で保護された動物がマイクロチップを装着されていた場合にチップの読み取りですぐに飼い主が判明しますので、保護犬が飼い主のもとに戻る可能性が高くなるのです。

日本獣医師会のマイクロチップはISO(国際標準規格)で定められている製品を使用していて、海外との動物のやり取りの際に行われる検疫でも挿入が必須となっています。

マイクロチップの読み取り機は、兵庫県では数年前から獣医師会に入っている全動物病院のほか、各地の動物愛護センターにも備わっています。全国でも各動物病院や動物愛護センターに急速に普及しつつあって、動物愛護の遂行のツールとして非常に有効なものとなっています。

令和元年6月の動物愛護管理法の改正で、犬猫の販売業者は販売する犬猫にマイクロチップの装着が義務化されました(※マイクロチップ装着義務化は令和4年6月1日施行。販売業者以外の所有者は努力義務が課される)ので、現在すでに私の動物病院に新規で受診する子犬子猫にはほとんど全頭マイクロチップが入っているような状態です。また、動物愛護管理法では、チップ装着義務化の施行と同時に、登録されたマイクロチップが狂犬病予防法に基づく鑑札とみなされることになります。

猟犬については、マイクロチップの装着を実施するよう猟友会からの文書で周知されているところですが、マイクロチップを装着しておくことにより、以前に聞いたことのある猟犬の盗難や逸走の場合に、発見された犬の飼い主がマイクロチップの読み取りで判明しますので、猟犬盗難の抑止にもつながるものとなると思います。

第一種動物取扱業に登録している繁殖者から購入した猟犬の子犬には当然にマイクロチップが装着されるようになると思いますが、既に何年も飼育されている成犬であっても未装着の場合、猟犬は大切な狩猟のパートナーですから、マイクロチップを装着して守ってやるべきだと思います。

マイクロチップ装着の費用は、私の動物病院では税込5,500円です。この価格は個々の動物病院で異なる可能性はあります。それ以外に日本獣医師会情報センターへの登録費用が1,050円ほどかかり、情報登録費用は郵便局かコンビニで支払うことになります。

 

 

犬のゴム風船誤嚥

昨日の事ですが。もうすぐ1日も終わりという頃に、初診のイタリアングレイハウンド男の子が、約1時間前にゴム風船を食べてしまったということで受診されました。

1時間前の事ですから、もしかすると既に胃から腸に移動してしまっているかも知れないかな?と思いつつ、催吐剤を与えてみました。

すると、出ました。

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ゲゲーッと吐きまして。

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吐物の中に緑色の物体が見えます。

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洗ってみれば、そのまんまゴム風船でした。

イタグレ君、これが腸に行ってしまったら、そのままツルリと出てくれるかどうか?ですが。もし途中で引っ掛かったら開腹手術という大事になる可能性がありました。

そこまで至らずに簡単な催吐処置で済んで良かったです。

ワンちゃん、猫ちゃんの異物誤嚥にはくれぐれも注意して下さい。

ではまた。

柴犬の皮膚病(主原因はアトピー)

今日の症例は、3ヶ月半前に初診の柴犬10才避妊済み女の子です。

来院2年前に皮膚炎が始まって。近医で治療するも却って悪化して。少し遠い動物病院で治療したらいったん良くなったものの、最近また悪化したので当院に受診したということです。

初診時の皮膚症状は画像の通りで、強い痒みを伴っているということです。

なお、食事はアレルギー性皮膚炎に対応しているという市販のドライフードを与えているということです。

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この子には、皮膚の掻き取り試験と、皮膚の細菌培養と抗生物質感受性試験に皮膚糸状菌培養検査。それに日本全薬工業㈱が実施しているアトピー性皮膚炎であるかどうかの血液検査を行ないます。

皮膚にトンネルを作る疥癬というダニとか、毛根に生息する毛包虫に関しては、掻き取り試験では見つからなかったのですが、保険として3ヶ月間効力のあるダニ駆除薬を与えました。

薬剤試験で判明した効果ある抗生物質と、皮膚糸状菌培養で陽性だったので内服の抗真菌薬の投与。皮膚に住む細菌や真菌をコントロールするシャンプーとその後の保湿剤の使用。それにアトピー性皮膚炎であるとの血液検査の結果に基づく痒みをコントロールする分子標的薬の内服を実施します。

次の週から皮膚の状態はどんどん改善して行きまして。

約1ヶ月後に画像を撮影してみますと。

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被毛の状態がかなり改善しているのが判ると思います。痒みも改善されてほとんど掻かなくなっているのと、夜眠れなかったのがぐっすりと安眠出来るようになっているということでした。

その後、治療開始から2ヶ月半くらいになったところで、抗生物質や抗真菌剤の内服は打ち切りまして。痒みをブロックする分子標的薬の内服と週に1回のシャンプーと保湿剤の適用で治療を継続して。

先日3回目の画像撮影を行ないました。

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被毛は9割方生えそろっています。後はアトピー性皮膚炎という体質であることを認識して、治療を継続することが大切であるということをお話ししていますから。

今後もボチボチ治療を続けて行くことで良い状態の皮膚被毛が維持されて行けると思います。

最後に、初診の画像と治療開始3ヶ月半の画像を、ビフォー&アフターという形で見ていただいてお終いにしたいと思います。

ビフォー
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ビフォー
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以上です。有り難うございました。

晩期遺残乳犬歯を残しているとこうなりました

そこそこ高齢のヨークシャーテリアの男の子の話しですが。

晩期遺残乳歯が残っていました。晩期遺残乳歯は、通常避妊や去勢手術の時に一緒に抜いてしまうのですが。この子は去勢手術をしなかったので、そのまま見過ごされてしまったみたいです。

歯石が増えて来たのが気になったとのことで、デンタルスケーリングを希望されたので、手術前の検査を、血液検査は全血球計数、血液性化学検査、血液凝固系検査を実施して。それ以外は胸部エックス線検査と心電図検査を行ってから。

麻酔をかけて口を開いて見ます。

歯石はそこそこ付着していますが。歯肉の後退は全体的には軽微です。

ただ、犬歯周りは特に歯石が多く付着していて、歯肉の後退が著しいのが見て取れます。

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犬歯の辺りを拡大してみますと。下の画像になります。

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晩期遺残乳犬歯が残っているために、永久犬歯との間に歯石が付着しやすくなっていて、この付近の歯周病が特に進行しているのが判ると思います。

ひと通り処置を済ませて、遺残乳歯も抜歯しました。

処置後の全体像です。

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犬歯周辺の拡大像です。乳犬歯は抜いてあります。

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今後は毎日歯磨きをすることで、この子の口の中は清潔に管理出来ると思います。

それにしても、晩期遺残乳歯はあなどることなく早期に抜いておく必要があることを再認識しました。

ではまた。

野生的生活は厳しいです

すごく小柄な子猫ですが。3日前から当院のクライアント様のお宅に現れるようになったということで。
人慣れしているようなので、気になって保護したとのことで来院されました。

先住猫に感染するような病気を持っていないかどうか?調べて欲しいということなので、潜伏期問題について説明の上、猫白血病ウイルス抗原、猫エイズウィルス抗体、猫コロナウィルス抗体の血液検査を実施して。いずれのウィルスも現時点では陰性ということでして。
その他耳ダニの有無などもチェックして。

消化管内寄生虫については新しい糞便を持参するようにとお伝えしました。

2日後に糞便を持って来られたので、検便をやりますと。

最初に目についたのは、マンソン裂頭条虫の卵です。
ラグビーボールが変形したような、特有の形で見分けがつきます。

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その次に見えて来たのが、壺型吸虫卵でした。

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そして、顕微鏡をスクロールして行くと。おびただしい虫卵が見えて来ます。虫卵の数は圧倒的に壺型吸虫が多く、マンソン裂頭条虫は比較的少なく感じます。

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ここで注意しなければならないのは。この2つの寄生虫卵は、虫卵の比重が回虫卵等よりもはるかに大きいので、通常動物病院で好んで行われる浮遊法という検便のやり方では検出出来ません。必ず直接塗抹法か遠心沈殿法という比重の大きな虫卵を検出出来る方法で調べないと見つからないのです。

因みに、マンソン裂頭条虫の成虫は、interzooさんの小動物寄生虫鑑別マニュアルという教科書では。
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こんな形でして。多数の節から構成されています。拡大すると。

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こんな節です。

壺型吸虫は、同じ教科書では。

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こんな形ですが。サイズが2㎜と小さいものですから、私は実物を見たことがありません。糞便を丁寧に洗ってメッシュで͡濾して、拡大鏡で見ないと見つけることが出来ない虫だと思います。

この2種類の寄生虫を駆除するには、幸い非常に良く利く注射薬がありまして。それを使うと1回か2回で駆除出来ます。同じ成分の内服薬もありますが。今までの経験では注射薬の方が効果が確実です。

この猫ちゃんも注射を実施しました。

注射の直後から、腸内で虫が苦しんで暴れたのか?嘔吐したりして、若干苦しみましたが。

翌日の便にはしっかりとマンソン裂頭条虫本体が出てました。

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拡大するとこんな感じです。

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1週間後の検便では、あれだけ沢山あった虫卵が全く見えなくなっていました。

マンソン裂頭条虫も壺型吸虫も、自然豊かな環境の水生生物を介してでないと猫や犬、人間には寄生しません。

つまり、魚やカエルなどの水の生き物を生で食べることによって寄生が成り立つという虫なのです。

この猫ちゃんは保護されるまでの数ヶ月間、加古川の河畔でカエルや昆虫や小魚などの水辺の生き物を狩りして命を繋いでいたのだと思います。

野生的生活は厳しいものですね。今後は愛情深い飼い主様の元で室内の生活になるわけですから、こんな寄生虫に感染することもなく幸せに生きて行けることと思います。

ではまた。