ここでご紹介する超音波メスとは、23.5kHzもしくは47.0kHzという超音波振動を使って組織を切開したり凝固したりする手術器具です。

この機械を使用するとかなり大きな血管でも糸で結紮することなくシールドして止血する能力を有するので、腫瘍摘出や肝臓の手術など出血が多いことが予想される手術に大きな力を発揮する手術道具であります。

血管をいちいち糸で結紮する手間と時間が省略されるので手術時間の短縮も図れ、動物の負担もかなり軽減されると思わ れるのですが。それ以上の利点は、この機械を使用することにより縫合糸を使わないで手術をすることが可能で、結果として、最近特にダックスフントなどのア レルギー好発犬種などで問題になっている術後縫合糸反応性肉芽腫の発生が生じないというメリットが大きいです。

ただし、どんな場合にでも使用可能かと言えば、その限りではないようです。

今のところ、犬の避妊手術、肝臓や脾臓の手術、腹腔内腫瘍摘出手術には大きな力を発揮しております。腫瘍摘出時に断 脚をしなければならないような場合には、今までになかったような素晴らしいスピードで手術を完了することが出来ますが、しかし、猫の避妊手術、犬猫の去勢 手術には使用しておりません。

猫の避妊手術、犬猫の去勢手術の場合、シールする血管の周囲組織が少ないので、超音波でシールしても凝固した組織が破綻して出血が生じる恐れがあると判断したからであります。

それでも、この新兵器は素晴らしい能力を持っておりますので、私の手術のレパートリーを増やしてくれた大切な道具であります。