犬猫にも、実は人と同じように血液型が存在する。 で、血液型が問題になるのは外科手術や事故、貧血を伴なう疾患時に輸血が必要になる場合である。
今までは、犬猫の輸血の時にはクロスマッチ試験という、供血側(ドナー)と受血側(レシピエント)の血液同士に異常な反応が生じないかどうかといった検査しか実施するしかなかった。
クロスマッチ試験についても、犬については、自然状態では不適合血液に対する抗体を持たないために、初めての輸血の 時にはどのような血液型の組み合わせでも凝血や溶血のような異常反応は生じないものであるためにあまり急ぐ場合には、それも省略して、あるいはドナーとレ シピエントの全血を単に混合するだけの簡易な試験をするだけで、エイヤッで輸血を実施していたのが実情であった。
しかしながら、不適合血液を輸血してしまった場合には、レシピエントの体内ではかなり速やかに、入れられた血液に対 する抗体が産生されて、その結果入って来た赤血球の寿命はかなり短いものに終わり、さらに再度同じ血液型の血液を輸血した場合には、重篤な副作用が生じる ようになってしまうのである。
輸血時に問題となる犬の血液型は、DEA1、1陽性とDEA1、1陰性の 二つの型が存在する。 この二つの血液型は、人間で言えばRH+とRH-の関係に良く似ている。 すなわち、DEA1、1陽性の血液をDEA1、1陰性の個体に輸血すると、初回の輸血では問題は生じないが、2回目の輸血からは重篤な拒絶反応が生じるよ うになり、逆にDEA1、1陰性の血液をDEA1、1陽性の個体に輸血する場合には何回輸血を繰り返しても問題は生じないのである。
猫の血液型の場合には、A型とB型、AB型の3つの血液型が問題となる。この中でA型が最も個体数が多く。 B型は猫の種類によっては時々見られ、AB型は非常にまれである。 猫の場合特にA型の血液をB型の猫に輸血すると、初回から非常に激しい拒絶反応が生じる。
2003年の春から犬の血液型判定キットが獣医師向けに販売されるようになった。 猫の血液型判定キットも2003年秋から販売されるそうである。
これで、血液型の判定に基づいて輸血を正しく実行することが出来るようになるのであるが、大切なことは、この血液型判定キットは、動物が病気などの状態のときには正確な判定が困難であるということである。
すなわち、犬猫の血液型は動物が健康な時にあらかじめ調べておいてこそ正しく役に立つということである。
グリーンピース動物病院では子犬のワクチン効果判定の採血の時とか、成犬のワクチン接種の時になるべく血液型の判定 も実施するように心掛けることにしている。 ただ、患者さんが込んでいるときなどはつい失念することもあるかもしれないので、この記事をお読みになった方で、自分の大切な動物の血液型を調べておきた いと思われる方は、遠慮なく獣医師に申し出ていただきたいと思う。
不幸にして貧血や事故、手術に直面し、いざとなって慌てるよりも、健康な間に血液型を調べておいて非常時に備える。 この心掛けが大切な家族を守ることになろう。