アウトドアで活動する猟犬等の活動的な犬の耳には時としてイネ科の草の芒(ノギ)が侵入することがある。 この芒(ノギ)という奴はとても厄介で、小さな逆棘が多数出ていて、一旦侵入するとなかなか自然には出て来ることがない。
芒(ノギ)が外耳道に侵入した犬は、頻繁に頭を振って異物を排出しようと試みるのだが、如何せんこの逆棘が災いして草の実は耳道の奥に奥にと侵入していくのである。
余談であるが、芒(ノギ)が災いして犬が苦しんだ例としては、牡犬の鼠頸部に出来た頑固な膿瘍の事例がある。 この膿瘍は抗生物質になかなか反応してくれず、相当焦ったものである。 結局局部を切開して探ったところ中から芒(ノギ)が出てきて、その後は順調に治ったものである。 その他には眼の結膜嚢(眼球と下目蓋の間のポケット状になった部分)内に芒(ノギ)が入り込んで、これまた頑固な結膜炎になって猪名川町から受診された事 例もあった。 芒(ノギ)、侮るなかれというところである。
耳道内異物の摘出に大きな力を発揮するのが、ハイネというメーカーの拡大鏡、照明付きの検耳鏡とそれに長さを合わせた異物鉗子だ。
ハイネの検耳鏡と異物鉗子。 間にある小さな物体がこれらを使って摘出した芒(ノギ)です。
耳道内の異物を取り除く作業は、当然のことながら麻酔下で実施される。 作業自体は異物が見えさえすれば数分で終了する。 その後で、異物によって耳道内皮膚が傷んでいることがあるので、鼓膜が破れていないのを確認してから専用の洗浄液を使用して耳道内を洗浄し、適当な点耳薬 でケアしておくのである。
草の芒(ノギ)が耳に入って来院したエアデールテリア。 麻酔下で摘出した後です。