ある日の午後、グリーンピース動物病院の手術風景をご披露します。今日の手術は若い牝猫の避妊手術です。術式は卵巣子宮全摘出を行ないます。
麻酔をかけるにあたり、まず採血して血液検査で内臓の状態をチェック。聴診で心音の異常の有無をチェック。高齢の動物にはさらに胸部レントゲン写真とコン ピュータ解析付きの心電図を取ります。 写真はその後に静脈にプラスチックカテーテル(静脈留置針)を装着しているところです。
画像は当院で使用している麻酔のモニターです。心電計、血圧計、パルスオキシメーター、呼気中の炭酸ガス濃度、吸気呼気両方の麻酔ガス濃度、呼吸の回数が同時に測定できます。
気管挿管、点滴、モニターの装着が終了し、今から毛刈りをするところです。
毛刈り終了後イソジンで消毒します。イソジンスクラブとブラシで洗浄したあと、イソジンをスプレーしてはアルコール綿花で拭き取るという作業を3回繰り返します。
3回目はイソジンをスプレーしたあと1分間置いてから拭き取ります。
いよいよ皮膚切開にかかるところです。術者、助手ともオートクレーブ滅菌した帽子、マスク、ガウン、滅菌したゴム手袋を装着しております。患者にも滅菌ドレープをかけて、術野の汚染を防ぎます。使用する器具は全てエチレンオキサイドガスで滅菌済みです。
早や子宮を引き出して、卵巣動脈を合成吸収糸バイクリルで結紮しているところです。バイクリルは生体内では約3週間で吸収され、アレルギーなどのトラブルは起きにくいと思われますし、結紮する時にも結節の安定性が良く、安全かつ快適に手術を進めることができます。
途中省略、腹膜と腹筋を合成吸収糸で縫合しているところです。
皮膚をナイロン糸で縫合中です。ナイロンモノフィラメントは汚れを吸収しないので汚れが糸を伝って体内に入って行かないのです。
皮膚の縫合が終わったところ。この縫い方はマットレス縫合といいます。
傷をガーゼと伸縮性のテープでカバーしたところです。
静脈輸液に使用したラクトリンゲルの残りは、皮下輸液に切り替えて注入してしまいます。
伸縮性メリヤスのチューブでシャツを作り、傷を舐めないように管理します。
一応麻酔から覚めて、気管チューブを抜いた後は、しばらく集中治療室で休んでもらいます。集中治療室の中は、酸素濃度40パーセント、気温24度C、湿度60パーセントに調節してあります。
避妊去勢手術くらいの手術の場合、その日の夕方にはクライアントの許にお帰しします。正直、うちでは獣医師が病院に 泊り込む事はしませんし、患者さんも慣れた環境の自宅に帰る方が精神的にも落ち着けるとの判断からであります。何か不測の事態の場合には、対応に少し時間 はかかるかもしれませんが、私の自宅に連絡を入れていただくようにお願いしています。