兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の レプトスピラ症予防(ネズミの尿が感染源)
診療方針

レプトスピラ症予防(ネズミの尿が感染源)

レプトスピラとは、螺旋菌(スピロヘータ)と呼ばれる細菌によって引き起こされる、人獣共通感染症である。 人の医療の世界では、届出伝染病だったと思う。 我々獣医師が犬のレプトスピラ症を診断した時は、家畜保健衛生所という都道府県の機関に届け出なければならなかったと記憶している。

要するにそれくらい重要な感染症なのである。

余談だが、スピロヘータによって引き起こされる感染症は、レプトスピラ以外にも、人では「梅毒」というこわーい性行為感染症が存在するのである。 お行儀の良い私目には無縁の病気ではあるが、読者の皆様、仲良くする異性はなるべく御一人に限定して、しも半身の健康にも十分に気をつけましょう。

話を元に戻して、レプトスピラの病原菌は、乾燥に弱く、湿ったところに存在する。 自然界では、レプトスピラはネズミが保有していることが多い。 そして、この菌にやられる動物は、もっぱら犬と人間である。 特に猟犬など、山野に入った犬が、沼地や湿地のたまり水、竹の切り株などにたまった水を飲んだりして、それがネズミの尿に汚染されていた場合に、レプトス ピラに感染し、その犬が不幸にしてワクチンをうってなかった場合には発病してしまうのである。

また、レプトスピラに罹った犬の尿を舐めたりしてもこれが感染してしまう。 困ったものである。

で、レプトスピラに罹ったら、どうなるのかといえば、とにかく高熱がでる。 元気食欲は当然無くなり、そして、濃い色の尿を排泄するようになり、そのうちに黄疸が出てきて、眼の白い部分が真黄色になってくる。 尿はいよいよ量も少なくなり、そのうちに無尿となり、腎不全と肝不全のダブルパンチで敢え無く死に至るのである。

レプトスピラのこわーいところは、これが犬だけでなく、人間にも感染して、人間も死ぬことがあるというところである。

実際、過去には自分の飼い犬が病気になったのを献身的に看病して、犬共々お亡くなりになられた方もいるということである。

地域的には、やはりネズミが強く関与する病気だけに、田舎、もとい、田園地帯と言おう。 に多い病気である。特に九州では気候の加減もあろうが、結構頻発するそうである。

犬としてはやはり圧倒的に猟犬に多いと思われる。 しかし、田舎の犬ならば、ネズミとの接触は頻繁に起きる可能性があり、猟犬に限らないであろう。

また、都会の犬でも、近年のアウトドアブームによって、キャンプなどの野外活動に連れて行かれる犬が増えていると思われるので、決して無縁の病気ではないと思われる。

で、このレプトスピラ対策は、どうしたら良いのかというと、 何はともあれワクチン接種であろう。

市販のワクチンには、通常二種のレプトスピラのワクチンが含まれている。 すなわちレプトスピラ・カニコーラとレプトスピラ・イクテロヘモラギーの二種である。

実際にはレプトスピラ菌にはいろいろな種類があり、その血清型別には10種類以上20種類くらいあったと記憶している。 そして、血清型が異なると、ワクチンも効を奏さず、結構不便なことである。

しかも、レプトスピラのワクチンは、結構副作用が強いということで、私も子犬にワクチンを接種する際には、生後60日未満の子犬にはレプトスピラのワクチンの含まれてない銘柄を使用するのである。

2013年9月以前に市販されていてワクチンで、レプトスピラの血清型が最も多く含まれている製品は、京都微研のD9Vという製品であって、前記2種以外に、レプトスピラ・ヘブドマティスという血清型のレプトスピラに対するワクチンも含まれていたのであるが。

2013年9月に、同じ京都微研から11種ワクチンが発売されるようになって。これには9種に入っている3つの血清型以外にレプトスピラ・オータムナリスとレプトスピラ・オーストラリスという我が国で比較的多く発生している血清型が追加されている。

この11種ワクチンが発売されて。我が国のレプトスピラ対策もようやく恰好がついて来たという感がある。

なお、11種に先駆けて合衆国のメーカーだったと思うが、レプトスピラ血清型がやはり5種ほど混合されたワクチンが輸入販売されるようになったと薬問屋さ んが紹介して来たのであるが。これは、残念ながら聴いたことの無い血清型であったので、我が国での発生状況に適合する物ではないと判断して導入を見合わせ たところである。

一般に細菌感染症に対するワクチンは、その抗体価が比較的早く下降するということである。 レプトスピラの発生が多いのは、夏から秋にかけてであるので、夏山でも訓練に連れて行かれる猟犬や、アウトドア活動に伴なう機会の多いコンパニオンドッグ などでは、ワクチンの追加接種の時期を6月から7月にして、レプトスピラとの接触に備えるようにした方が良いと考えるものである。