兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の バベシア症予防(マダニ防除は必須)
診療方針

バベシア症予防(マダニ防除は必須)

バベシア症とは主にマダニによって媒介される原虫性の感染症で、赤血球が侵されてひどい貧血と黄疸が生じる、犬にとっては致死的な病気である。 その分布は従来九州や関西の一部と沖縄に限られていたのであるが、最近は日本全国に拡大しつつあり、東北地方でも見られるようになってきているらしい。

このバベシア症が、闘犬の試合でバベシア症のキャリアーを咬むことによって感染してしまうということが私の恩師の山口大学獣医内科学教授 (おっと2003年3月末をもって定年退官されたんだった) であった大西堂文先生の研究によって明らかにされてはいるが、この感染経路は一般的ではなく。 バベシアのコントロールはやはりマダニのコントロールが最重要課題である。

マダニとは、クモやダニの仲間の節足動物で、山野の草木に子虫が付着しており、温血動物がその下を通るとその体温や炭酸ガスに反応して落下し、動物に付着するといわれている。

バベシアを保有するマダニが犬に取り付いて吸血し、結果として犬にバベシアを感染させるのには48時間の時間が必要とされる。 従ってバベシア予防のためには、犬にマダニが取り付かないようにするか、仮に取り付いてもそれを48時間以内に駆除してしまうことが必要である。

マダニが犬に取り付かないようにすることの出来る忌避剤は、寡聞にして今現在思い当たらない。 恐らく存在しないのではないかと思う。

であるならば、犬に付着したマダニを適切に駆除することが必要である。 今現在マダニをほぼ完璧にコントロールできる薬物は、メリアル社製のフロントラインという殺虫剤しか存在しない。 我が国では日本全薬工業(株)が取り扱っている製品であるが、このフロントラインは実に素晴らしい製品である。

フロントラインには背中の一部にたらすスポットオンと全身にスプレーするものとの2種類のタイプが存在するが、日常的に山野に入れる猟犬などでマダニの完璧なコントロールを期するのならば、スプレーがお勧めである。 スポットオンは使用が手軽なので一般に人気があるが、これも普通に月に一回スポットしておけばたいていマダニのコントロールは大丈夫である。

フロントラインの使用上の注意事項としては、シャンプーを避けるということが特に強調されねばならない。 何となれば、フロントラインは脂肪に非常に親和性があり、これが生体に適用されて体表に広がり、いったん皮脂腺に取り込まれて、その効果を徐々に発揮するには皮膚被毛に正常に存在するワックス成分が必要不可欠なのである。

フロントラインで駆除できる外部寄生虫はマダニと蚤である。 いったんスプレーないしはスポットしておけば、蚤には2ヶ月マダニには1ヶ月の効果を発揮する。

バベシア予防を考えるならば、フロントラインを使用するのがもっとも効果的である。

最近フロントラインに似せた容器で蚤やダニのコントロールを謳ったゾロ品が主にペットショップやホームセンターで販 売されていると聞き及ぶが、非常に効きが悪い。 詐欺みたいなものである。 あんなものを販売して、それを信じて使用した方の犬が蚤アレルギー皮膚炎に罹ったぐらいならば、笑い話で済もうが、 生命に係わるバベシアに罹った場合、どうするつもりなのであろうか。

フロントラインはあくまで獣医師によって処方されるべき要指示薬である。 動物病院でしか入手できないので念のため申し添える。