兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2015 4月
院長ブログ

月別アーカイブ: 2015年4月

子犬の食事量について

もうすぐ生後4ヶ月令になろうかというウェルシュ・コーギの男の子の話しですが。

目やにが多いので診て欲しいということで来院されました。

しかし、診察台上の子を見ると、異常に痩せています。

画像ではそんなに感じられないのかも知れませんが。それは被毛で覆われているせいで。手で身体を触ってみると、背骨は立っているし、肋骨も浮いているし、骨盤も突き出ているのが感じられるのです。

「この子は食が細い(食べる量が少ない)のですか?」と訊くと。

「もっと欲しそうにするんですが。買う時にペットショップの人が『この量を与えて下さい。』と言われた量を守って与えています。」との返事でした。

一瞬。めまいを感じてしまいました。カルテの記載を見ると飼育開始が生後約3ヶ月令の時ですから。その時の食事量を厳密に守っていれば、成長と共に食事の必要量が増えて行くのが生き物の子供の原則ですから。明らかに栄養不足であります。

ペットショップの店員さんの言い方がよほどきつかったのか?言われた量が完璧なマニュアルとして受け取られてしまったのかも知れませんね。

なお、目やにが多いのも、栄養失調の結果かも知れません。

飼い主様にはそのことをお話しして理解していただき。子犬の成長に合わせた食事量の決定法をお伝えしました。

私が用いている子犬の食事量の決め方ですが。基本的に食欲の程度と便の硬さを基準に考えています。

まず、子犬が来た時には。最初はそれまで世話をしていた人に伝えられた量の食事を与えます。
子犬が与えられた食事をあっという間に食べ終えて。その数時間後のお便がしっかりと硬いものであれば。
次から、食事毎にその量を5%から10%ずつ増やして行って。ある量を超えて便の状態が軟便になったら。
そのひとつ前の食事量がその子の消化能力の限界と考えて。その量あるいはそれよりひとつ前の量を与えるようにして。
成長と共に便の状態が微妙に硬く感じられるようになったら。もう一度量を増やしてみるということを繰り返すのです。

この方法は、まず検便や駆虫でお腹に消化器性寄生虫が居ないということが大前提であります。

基本的に、よほど特殊な例でない限り。成長期の子犬に肥満を用心しなければならないということはないと思います。

なお、小型犬の場合。往々にしてペットショップの店員が、「多く食べさせると大きくなり過ぎますから注意して下さい。」と説明することがあるようですが。

ショウドッグならばいざ知らず。一般的な家庭犬の場合は体格がスタンダードの範囲内に収まることよりも。健康で知能が高くお利口な犬に育つことの方がもっと重要だと思います。

基本的に犬の体格(骨格)は、持って生まれた資質。即ち遺伝情報でプログラムされた範囲内までしか大きくなることはありません。沢山食べさせて大きく育ってしまうということは大きくなってしまう遺伝情報の持ち主だったというだけのことだと思いますし。大きく育った小型犬が家庭犬として失格だとも思いません。

人間で「大きく育ったら駄目だ。」言われるのは競馬の騎手とか体重に制限のあるボクサーくらいのものでしょうし。そんな人でも小学生の頃はしっかり食べて健康に育つようにと、ご両親は愛情を込めて食べさせていると思います。

基本的に子犬も人間と同じです。成長に応じてその時その時に最適な食事の質と量を確保して、健康で賢い良い伴侶犬に育ててやって欲しいと思います。

 

 

外猫生活の危険性

今年16才になる日本猫の女の子の話しですが。

この子は8才の頃急に元気食欲低下を訴えて来院し。血液検査で猫免疫不全ウィルス(通称猫エイズウィルス)に感染していることが判明しています。

その後、それなりに元気に自由奔放な外猫生活を謳歌しているのですが。

3日前に飼い主様が以前にも経験している膀胱炎症状を呈しているということで来院され。お薬を処方したところ。

今朝は本猫を連れて来院され。投薬した後こんな物を吐いたと。ジップロックのポリエチレン袋を出されました。

猫回虫が入ってました。

猫回虫は人間にも感染する可能性があることとか。人間でも幼児が感染すると回虫幼虫体内移行症になる可能性もあることなどお話しして。

プロフェンダースポットという滴下式の駆虫薬を猫ちゃんの首筋に垂らしてやりました。

この度の感染は、これで駆虫出来ると思いますが。

この子が活動するエリアは、回虫卵に汚染されているとせねばなりませんから。当然再感染の可能性は高いと考えられます。

同居しているお孫さんの健康のこととか考えると。猫ちゃんが外に遊びに行くことを制限することが最も有効な対策であるとは思いますが。飼い主様は猫ちゃんの自由を制限することは考えられないみたいです。

また、定期的な検便をとも思うのですが。外での排泄が習慣化しているので便の採取は不可能だとのこと。

せめて、滴下剤による定期的な駆虫をされたらどうか?とお伝えしています。プロフェンダースポットのメーカーは年に4回の定期的駆虫を推奨しております。

自由なアウトドア生活は、危険と隣り合わせです。

外出自由な猫ちゃんと外出は皆無で家の中のみでの生活の猫ちゃんとで寿命の統計を取ったところ、家の中だけでの生活の猫ちゃんの方が3年は寿命が長いという結果が出たとの新聞記事を記憶しております。
総理府でも猫の室内飼いをするようにという方針ですし。

猫は避妊去勢を実施して室内で生活させるように子猫の頃から習慣づけてやれば、出れないからといってストレスを感じることもないと思いますので。

「猫は外に出るもの」とお考えの飼い主様においては、今一度考え直していただきたいと切に思うものであります。

ではまた。

犬の子宮蓄膿症

8才と8ヶ月令になるミニチュアシュナウザーの女の子のなっちゃんの話しですが。

飼い主様はなっちゃんの子が欲しかったとのことで、避妊手術をせずにこの齢まで来ましたが。肝心の子供の方は、発情が微弱で判らなかったらしく、交配をするに至らなかったそうです。

ところが。この度の来院の約1週間前から食欲がひどく低下して。2日前から下り物が出るようになったということで、来院されました。

これは多分子宮蓄膿症であろうと思うのですが。あまりにも先入観をもって事を進めて、致命的な誤診に陥っても困りますので。

血液検査、腹部エックス線検査を行ないます。

血液検査では、白血球数の増加。特に好中球数と単球数の増加が著しく。軽い貧血があります。血液生化学検査では血液総蛋白の増加と、犬CRPの高値が目立つ異常でした。

白血球数、特に好中球と単球の増加、及び炎症マーカーである犬CRPの高値は体内に炎症が存在しているということを示唆しております。血液総蛋白の増加は、継続する抗原刺激によって免疫抗体が増加しているということなのかも?知れません。

となると、経過は結構長い?

腹部エックス線検査では。

横から撮った画像では、お腹の中央部分に白く大きなマスが見えています。

画像が小さいので判り難いかも知れませんが。小腸のガスが画面向かって左と上に押しやられています。

子宮が膨れて蛇行している陰影がはっきりと確認出来ているわけではありませんので。腹部エコー検査を行ないました。

画面やや右側にくっきり真っ黒に見える逆台形みたいな像が膀胱でして。その左側に見えているのが膿で充満された子宮かな?という感じです。

それで、その像を辿ってみます。

ぶっとい筒状の構造が前の方に延びて行っております。そして、それは2本存在してました。

以上で子宮蓄膿症の診断確定です。

私の場合、子宮蓄膿症と診断を付けたら、動物の状態が許す限りなるべく早期の手術を行なう方針で臨みます。

この子の場合も、残業してその日のうちに手術を実施しました。

手術までの数時間、静脈カテーテルより乳酸リンゲルの輸液を行ないます。

外来診療の時間が終了したら、すぐに麻酔導入を行ない。術野の毛刈り、消毒、術者、助手の手洗い消毒、術衣と手袋の装着と、手術の準備をどんどん進めて行きます。

で、お腹を開けて見ると。こんな物が出て来ました。

アップすると。

こんな感じです。大きな子宮です。普通に正常な子宮は、この子のサイズの犬だったら、ボールペンくらいの太さで長さはボールペンよりも少し短いくらいでしょうか?

摘出した子宮は、無菌的にちょいと突いて。出て来た膿を使って細菌培養と薬剤感受性試験を行ないます。

膿の色が気持ち悪いです。

術中に血液酸素飽和度が若干低下気味で不安になる時間もありましたが。何とか手術は終了。画像は丁度覚醒して気管チューブを抜く瞬間です。

麻酔から覚醒して入院室で一晩過ごしたなっちゃんです。

この後、翌日には食事を摂るようになりましたので。手術後2日で退院して行きました。

何とか無難に手術を終えて良かったです。

繁殖予定の無い女の子のわんちゃんは、なるべく早期に避妊手術を実施することによって健康で長生きすることが獣医学的に証明されております。未避妊のわんちゃんと一緒に暮らしている飼い主様には、是非そこのところに想いを致していただきたいと思います。

ではまた。