今朝来院されたもうすぐ14才になる黒ラブちゃんですが。
昨日からいきなり嘔吐が始まって。何回も吐くし、食欲は全く無いし。ということです。
今まで特段の基礎疾患も無い子ですから。いきなりの発症では消化管内異物か?とも思いますが。あまり先入観を持ち過ぎても誤診に繋がりますから。
症状が厳しいし、一般状態もひどく悪い感じでもありますし。血液検査と腹部エックス線検査、必要に応じて腹部エコー検査を行なう旨飼い主様の了解を得て検査に入りました。
血液検査では、総コレステロールが高いこと。アルカリフォスファターゼが高いこと。犬CRPがひどく高値であること。総白血球数と好中球、単球がかなり高いという結果です。
腹部エックス線検査では、胃の中に妙な陰影が観察されます。
黒い矢印の先が胃底部ですが。紐のような物がありそうです。
腸の方にはガスの貯留は見当たりません。
その他の所見としては、もう一つの横向きの画像で前立腺肥大が観察されました。
念のために腹部エコー検査も実施しましたが。腸管の妙な拡張像があるくらいです。今回の症状とは関係が薄いでしょうが、副腎が大きくなっていることも観察されました。
私としては。絶対とは言い切れませんが。消化管内異物で苦しんでいる可能性があると判断しまして。午後から試験的開腹を試みたいと飼い主様に提案して。了解を得ました。
それから手術までの間、前腕の静脈に留置した静脈カテーテルから乳酸リンゲルの輸液を実施します。
午後1時過ぎから麻酔導入にかかります。
気管挿管をして。各種モニターを装着し。術野の毛を刈り。消毒を実施して。術者、助手は手洗い、消毒、滅菌した術衣手袋の装着と、基本通りの手術の準備を進めて行きます。
画像は、助手が準備を済ませて入室するのを待っているところです。
準備が整ったら、皮膚切開から始まり。みぞおちからペニスの横にかけて大きくお腹を開けて行きます。
胃を外から触ってみると、明らかに大きな異物があります。腸を出してみると。アコーディオンのようにヒダヒダに折り畳まれて窮屈そうです。
画像がちょっと拡大し過ぎですね。この腸管の状態は、紐状異物が入った時に特有の所見です。
胃や腸を優しく触って調べて行くと。腸の異物は胃の異物と繋がっていることが判りました。
腸の異物を胃の方に優しくしごいてみると。胃の方に移動して行きます。腸をひどく傷めないように注意しながら、腸の異物を胃に戻してやることが出来ました。
その後は、胃を切開して異物を取り出します。
えらい物が引っ張り出されてますね。
取り出された異物はこんな物でした。
その後は、胃の切開創を縫い合わせて。もう一度胃や腸を優しく触って異物が残っていないことを確認して。腹膜、腹筋、皮下織、皮膚と、縫合を実施してお終いになります。
麻酔は安定してますので。事前に飼い主様の了解を得ていた通りに前立腺肥大対策として、去勢も併せて実施しました。
縫合が済んで、術創にフィルムを貼ったりしながら、覚醒をさせているところです。この後しばらく時間はかかりましたが。無事に覚醒してくれました。
これから数日入院してもらって。翌日以降に食事を食べるようになれば退院ということになる予定です。
何せ生き物のことですから絶対という言葉は使えませんが。一応回復してくれるものと考えております。
早く元気になってお家に帰って。幸せな生活を送って欲しいものであります。
ではまた。