今日の午後診で3種混合ワクチンを接種に来られた猫ちゃんの話しですが。
私は、犬でも猫でも年に一度のワクチン追加接種の際には、なるべく検便と胸部聴診を欠かさないように心掛けています。
歳を経て心雑音が聴こえるようになって、心臓病の存在が明らかになる犬猫も居れば。消化管内寄生虫の感染が明らかになって、重症になる前に駆虫することにより事なきを得る事例も多いです。
この子の場合は、直接塗抹検便によりマンソン裂頭条虫という寄生虫の卵が発見されました。
検便は直接塗抹という方法と、浮遊法という方法と二通りの方法を同時に行なうことにより、検出可能な寄生虫卵のバリエーションが多くなります。
マンソン列頭条虫の卵は浮遊法では検出されることは普通はありません。この卵を見つけることが出来る方法は、直接塗抹法か、あるいは遠心集虫法と呼ばれるかなり手の込んだ検便のやり方になります。
それで、マンソン裂頭条虫とはどんな寄生虫かというと。自然豊かな土地に住んでいる、世間で「真田虫(サナダムシ)」と呼んでいる寄生虫です。真田という名前の由来は、和服の着付けに使用する真田紐という小道具に姿が似ているためと記憶しております。
マンソン裂頭条虫がどんなやり方で動物に寄生して行くのか?と言えば。まず、動物の腸管に棲んでいる親虫が卵を産んで。その卵が川や池の水の中に流れて行ったら。
そこでミジンコなどのプランクトンに食べられて。
そのプランクトンを魚やオタマジャクシたちが食べて。
その魚や、オタマジャクシが成長したカエルを犬や猫や人間が生で食べると、犬や猫や人間の腸管に親虫が寄生することになるわけです。
特筆すべきは、親虫が産んだ卵を、犬や猫や人間が直接口にしても、その卵はお腹の中で成長することはないということで。必ずプランクトンや魚やオタマジャクシなどの小動物の身体を経由しないと成長出来ないということなのであります。
因みに今日検便でマンソン裂頭条虫が発見されたにゃんこは、普段かなりワイルドな生活を送っていて。カエルやスズメやヘビや何やかやを狩りするのが日課だということでした。
このまま寄生を放置していると、お腹が具合悪くなったり、最悪虫が分泌する毒素にやられて神経症状が出たりすると言いますから、一応駆虫はしようという話しをさせていただいて。
この子の場合注射で駆虫しました。
しかし、猫にとって狩りをするというライフスタイルはなかなか改めることは困難だと思いますので。今後は定期的に検便を駆虫を繰り返す必要があると思います。
でもにゃんこちゃん。楽しい毎日を送っているのですね。ある意味素晴らしいことと思います。