兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2013 6月 09
院長ブログ

日別アーカイブ: 2013年6月9日

犬の自虐 常同障害?

D君は、12才と6ヶ月令になる雑種犬の男の子です。

2005年頃即ち5才の頃から、お尻や尻尾の毛や皮膚を咬む行動が目立つようになり、普段と違う場所に入れたりすると頻繁に咬む傾向があるということでした。

試しに皮膚病として治療を試みたこともありましたが、全然反応が見られませんでした。

飼い主様には、皮膚病というよりも行動異常に分類される症状の可能性が高いという話しをして来ましたが。

そのうちに、とうとう皮膚が破れるくらい激しく咬むようになったのと、グルグルと激しく回るという異常行動が発現したために、再来院された時。

たまたま猫の症例で肛門嚢の内容が溜まり過ぎてお腹や肢の毛を舐め削ってしまうのを、肛門嚢を絞ることで改善することがあるというのを、大学の獣医内科系の先生に教えてもらったことがありましたので。

肛門嚢を触ってみると異常に膨れていて、それを絞ってやると大量の内容物が出て来ました。本当に有り得ないほどの量でした。
同時に、抗不安薬を2種類ほど組み合わせて処方してみました。

1週間後に経過観察のために来院された時に、飼い主様は治療により劇的に異常行動が消失して落ち着いた状態になったという話してくれました。

その後、肛門嚢は飼い主様が絞り方を覚えて定期的に絞るようになって。しばらく投薬を続けていたのですが。

投薬中は良好であっても、2日か3日休薬するとてきめんに咬むようになるということで、投薬を継続しているような状態です。

最近、フィラリア予防に先立つ血液検査の際に、セットで検診的な詳しい内容の検査を実施してみたところ。
アルカリフォスファターゼの数値が2050IU/Lと著しい上昇が見られて。よく聴けば多尿多飲の症状もありそうだということであります。

クッシング症候群の可能性もあるので、検査と治療をお勧めしているところです。

D君、生きて行くことは本当に大変なことでありますが。何とか心安らかに生活が出来るようになって欲しいと思っております。

フィラリア予防の落とし穴

狂犬病予防注射とフィラリア予防のために初めて来院された4才8ヶ月令フレンチブルドッグの女の子の話しですが。

狂犬病予防注射を接種しながら、話しを聴いていくと。今年は既に1回は昨年の残りの滴下剤のフィラリア予防薬を使用したということでした。昨年の最後の予防薬は10月の末に使用して終わったとのことでした。

フィラリア予防の際には、面倒に感じることもありますが、毎年予防薬投与前に血液検査で前年の予防状況を確認する必要がある旨説明して。

血液検査に同意が得られましたので採血しました。

結果を見てびっくりです。

犬フィラリア成虫に対する抗体が陽性と出ました。

右側に見える検査キットの窓の反応が、左側の説明用小パネルの陽性と同じ反応になっているのが判ると思います。

フィラリア予防薬は、滴下剤とか内服用錠剤とか食べるタイプとか、年に1回の予防注射形式とか、いろいろあるのですが。基本的に能書の通りに使用していれば効果は確かなお薬ばかりだと思います。

ただし、獣医師の個人責任で、馬や牛や豚などの産業動物に使用される同様の成分のお薬を、希釈して処方する先生がおられますが。私の経験では、そんな先生のところから転院された子に、予防の失敗例が多く見られています。

獣医師は、原価が安い薬に欲に駆られて飛び付くのではなく、予防薬くらいはきちんと認可が下りた正規のお薬を使用して、飼い主様の安心安全の要望にお応えする必要があると思います。

今回のフレブルの女の子の場合、多分ですが、正規のお薬を使用していたと思いますが。使用方法に何処か能書と異なる点が存在していたのかも知れません。

犬フィラリアに感染した犬に、予防薬をいきなり投与すると、ショックを起こしたり急性フィラリア症を発症する可能性がありますから。

この子にはショックを防ぐためのステロイドホルモンを同時に処方します。

当院でのフィラリア予防を2年から3年実施して行きますと、通常は3年から5年と言われているフィラリアの寿命が短くなるようで。大抵は3年目でフィラリア成虫抗体検査が陰性に転じています。

何事も基本が大切なんだなあと、強く実感された出来事でした。