兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2013 2月 10
院長ブログ

日別アーカイブ: 2013年2月10日

02/09 高齢Mダックスフントの歯肉の腫瘤生検と歯周病処置

年齢15才という高齢のミニチュアダックスフントの男の子ですが。

この数年前から顔を見る度に歯周病処置が必要ですよとお伝えして来ました。

先日来院された時には、今年に入ってから右下顎の口の中に腫瘤が出来ていて、大きくなりつつあるので心配であるということでした。

口の中を見ると、右下顎の歯肉に黒いやや柔らかい感触の腫瘤が出来ています。嫌な感じです。悪性黒色腫(メラノーマ)辺りが怪しいです。

絶対ではないけれども、あまり良い物ではなさそうだとお伝えしたところ。切除生検と病理検査、それに懸案だった歯周病処置を希望されました。

術前検査として、胸部エックス線検査、コンピュータ解析装置付き心電図検査、採血して全血球計数、院内の血液生化学検査、外注による凝固系検査を行ないました。

歯周病や悪性腫腫瘍などによる慢性炎症に起因するであろう血小板数の軽度の増加と、犬C反応性蛋白の上昇が観察されました。

処置の当日。朝から預かって昼まで静脈輸液を実施して。午後1時過ぎた頃から麻酔導入を行ないます。

麻酔導入後、生検切除を実施する前の腫瘤の様子です。

赤い矢印の先の辺りが問題の腫瘤です。

 

右下顎の歯石を綺麗に掃除して、腫瘤を切除し、これから右上顎の歯石を除去にかかろうかという段階での画像です。歯石が除去された下顎の歯の綺麗さと、未処置の上顎の歯の悲惨な状態のコントラストが強烈です。

右が終了して、左側の上下の歯の歯石も綺麗に清掃した後の画像です。

歯石の付き方が半端ではなく。特に左右上顎犬歯から第1、第2前臼歯までの歯周ポケットがひどく深くなっていて、清掃して行くと食物塊や被毛などがボロボロと出て来るような有り様でした。
本犬すごく気持ちが悪かったのではなかったか?と思慮されます。

生検も歯周病処置も無事に終了して、麻酔からの覚醒も速やかで、元気に退院して行きました。

腫瘤の病理組織検査は10日から2週間で結果が帰って来ることと思います。良性であって欲しいのですが、腫瘤の根っ子に相当する部分が周囲の一見健常に見える部分に沁みて行く有り様が見て取れますので、悪性度の高い腫瘍ではないか?と予想しています。

検査結果が出たら、獣医として出来ることを提案させていただくわけですが。飼い主様はこれ以上痛い思い苦しい思いをさせたくないという気持ちが強いようですので、経過観察になってしまうかも知れません。

 

 

02/08 老犬の前肢の腫瘤

今日の症例は日本犬雑の相当高齢の男の子ですが。

数年前から右前肢皮膚に腫瘤が出来まして。それが昨年から自壊して、最近そこに感染も加わって、周辺もズルズルの状態になっていて。

今回悪くなる前には近くの動物病院で治療していたのが、症状が悪化してその先生に診てもらおうとしたのに、そこが休診だということで、1月12日に当院に来院しました。

その時の画像を撮影しておいたら良かったのですが。それはひどいもので、炎症は皮下にも広く及んでいて、関節の可動性もかなりおかしな状態になっていたのです。

私が最初にやったのは、まず腫瘤の一部分をメスで切除して病理検査に出すことと、炎症で周囲をひどく濡らしている分泌物を採取して細菌培養と薬剤感受性試験を行なうことでした。

薬剤感受性試験で翌日に得られた結果は、ほとんどの薬に対して抵抗性を持ってしまった多剤耐性緑膿菌の感染があるというもので、唯一マルボフロキサシンという抗生物質だけが効いているような状態でした。

腫瘤周辺の感染は、マルボフロキサシンの投薬2週間ですっかり良くなって、皮膚に開いていた穴も塞がり、関節の可動性も改善して普通に歩けるようにまでなりました。

投薬中食欲が減退気味だったのは、胃酸分泌を抑えたり吐き気を止めたりするお薬を組み合わせることにより何とかクリヤーしました。

2週間の間に外注していた病理組織検査の結果も帰って来て、良性の腫瘍であるという結果でした。

私としては、良性腫瘍でもあり、感染もすっかり良くなって、一応めでたしめでたしという感じだったのですが。

飼い主様としては、如何に良性腫瘍であっても、あんなにひどい展開になるのであれば、是非とも切除して後顧の憂いを絶ちたいという強いご希望をお持ちのようで。

腫瘤の切除を希望されました。

で、術前検査の結果では、血液検査と尿検査、腹部エコー検査から慢性腎不全という診断が得られたのですが。とりあえず初期から中期までのものであり。手術自体は遂行可能であると判断しました。

2月8日に腫瘤の切除を実行しました。

気管挿管を済ませて各種モニターを装着します。それから術野の毛刈り、消毒を行ない。術者は手術帽とマスクの装着、手洗いと消毒、術衣手袋の装着をやって。術野を滅菌ドレープで覆ってから手術を始めます。

今から毛刈りをする腫瘤です。

で、手術は無事に済んで、画像的にはいきなりですが。術後の肢です。腫瘤が良性で比較的小さかったので、形成外科的な皮膚移植のような手技は不必要でした。

術創の上に光が反射しているのは、創傷管理用のテガダームというプラスチックフィルムを貼り付けているからです。

これで忌まわしい腫瘍の自壊と感染が再発する可能性は消失しました。
ついでに見つかった慢性腎不全をコントロールして行けば、推定14才という高齢ながらも、もうしばらく元気に生きて行けそうです。