午後診に来院された2才8ヶ月令のチワワの女の子ですが。
1週間前から抱っこしようとすると悲鳴を上げるとのことでした。
最初はご主人が抱っこする時に限っての悲鳴だったのが、今日は奥様が抱っこする時にもひどい悲鳴だということでの来院です。
高齢の犬でこんな稟告の場合、心臓疾患を持っていることがありますが。この子は若いです。一応胸部聴診を行ないましたが、心音呼吸音共に異常はありません。
抱っこで悲鳴ということは、抱こうとすると痛みを感じている可能性がありますので、次に胸部腹部の触診を行ないます。
胸を触る間は大丈夫でしたが、胸とお腹の境目、最後肋骨の後ろ側辺りに手が当たると、「ウッ」という感じで腹筋に力が入るのを感じました。
触診上の異常を確認するために、胸腹部のエックス線検査を行なってみました。
まず目に留まったのは、側方からの写真における気管虚脱です。興奮した時、受動喫煙の時、あるいは何にも無い時にも、時々フガフガと異常な呼吸音をする時があるそうです。
画像、矢印の先が虚脱部位なのですが、絵が小さいので判り難いかも知れません。
その次に気になったのは、腹背像における右腹壁の腹筋の筋層間に黒くエアーが侵入しているかのような陰影が見られます。
全体的な絵では判り難いかも知れませんので、その部位を切り取って大きくしてみます。矢印の先が問題の部分です。
おそらくですが、痛みの部位はここだと思います。
身体には目立った外傷はありません。したがって怪我が原因で空気が入り込んだものではなさそうです。
また、元気食欲には異常は感じられないということです。
さて?このエアー?は何処から来たのでしょうか?
胸腔は、基本的に陰圧になっているはずですから、胸から来たものではないと思います。
後は?何?さて。
正直よく判らないので、気管虚脱のコントロールのための気管支拡張剤と、非ステロイド性消炎鎮痛剤は処方しましたが。
飼い主様が帰ってからもう一度カルテを見直していると。
もしかして嫌気性菌に利く抗菌剤をお出しするべきだったかも知れません。
そう考え直して、飼い主様に電話連絡をして、嫌気性菌に利くであろう抗菌剤を追加で処方しました。
飼い主様には泥縄的な対応で申し訳ないことであります。
一応これで1週間経過を追ってみようかと思っていますが。経過が悪ければ途中で更なる対応をしなければならないかも知れません。
さて、どうなることか?これから気が抜けません。