シーズのかん太君は、もう12才になりますが。生後1才の頃に肝障害を患って、その管理をして来たというのはありますが。それ以外はこれまで特段の疾患は無くて過ごして来ました。
この家族は、もう20年近くも通って来ていただいてまして。先代のワンコは、牡犬がカンチ君、牝犬がリカちゃんと言って、東京ラブストーリーがネタかな?と思いつつ、診療して来た記憶があります。
このお家の二人のお嬢様も、いつしか成人、ご結婚されて、お孫さんにも恵まれ幸せにお過ごしだということでした。
しかし、先日、もう2週間ちょっと前の10月6日のことですが。
かん太君が、前日にトリミングに行った直後から、急に呼吸が苦しくなって、食欲が無くなってしまったという稟告で来院されました。
聴診してみると、心雑音がニューヨーク心臓病協会だったか?の基準だと思いますが。6分の2の強度の全収縮期性心雑音が聴取されます。
飼い主様に呼吸器症状とか何か無かったのか?と訊いてみれば、1年以上前から咳をしていたという話しです。
一応、呼吸循環器系の問題に限って、胸部エックス線検査と心エコーを実施してみました。
エックス線検査では、心臓の外形が明らかにおかしい形状で、右側に突出したような形になっています。肺野には肺水腫のような像は、はっきりとは確認出来ません。
心エコー図検査では、左心室と左心房を区切っている僧房弁というバルブの部分で逆流が生じていました。心臓腫瘍についてははっきりとは確認出来ませんでした。
飼い主様には、心臓の右側の形状がおかしく見えるについては、心臓腫瘍か?その部分の肺炎か?肺の腫瘍か?あたりの可能性があることをお伝えして、投薬はACE阻害剤、ピモベンダン、利尿剤、抗生物質などを処方しました。
飼い主様のご意向は、仮に心臓腫瘍とか肺の腫瘍とかの場合、開胸手術をやってどうこうということまではするおつもりは無いということでした。
3日後の10月9日再来院の時には、咳の症状は少し改善しているということでしたが、食欲がかなり低下してしまっていて、元気が無い。飲水はそれなりにあるということでした。
血液検査を行なってみたところ、著しい高コレステロール血症、軽度の肝障害、尿素窒素の上昇が気になるところでした。
高コレステロール血症については、甲状腺機能の検査を外注で実施すると共に、見切りで甲状腺ホルモンを処方しました。
食べないについては、焼け石に水かも知れませんが、皮下輸液を実施し、その他は前の継続で処方します。
甲状腺の検査結果は数日後に帰って来ましたが。FT4という項目が正常値よりも低下しているという結果でした。
しかし、10月15日に再来院した時には、それまでは少しずつでも何とか食べていたが、いよいよ食べることが出来なくなったということです。
今までの処方に追加で、ぺリアクチンという食欲増進効果の副作用のある抗ヒスタミン剤を処方してみました。
飼い主様には、もしかすると、いよいよ駄目かも知れませんとお伝えしました。
ところで、この飼い主様は、話しをしていると、以前からひどい頸部痛に悩まされているということでした。
余りにも痛みが辛いので、近所の整形外科にて局所麻酔薬のブロック注射をしてもらうそなのですが、最初はよく利いていた注射が、最近はそう利かなくなってしまっているという、非常に気の毒なお話しであります。
私は人間の痛みとかについては素人ですが。お話しを聴いていると、もしかして、私が月に一度お世話になっている広島県は尾道市の前岡治療院の前岡院長先生だったらこの飼い主様の苦しみを軽減出来るかも知れないと思いました。
前岡先生のことをお話ししてみると、是非とも紹介して欲しいということですから、治療院の住所と電話番号をお伝えした次第であります。
さて本日、久し振りにかん太君の来院がありまして。
先週金曜日辺りから急に元気が回復して来て、食欲も増進し。散歩をせがむまでになったということでした。
正直もう駄目か?と思っておりましたので。非常に嬉しかったです。
そして、頸部痛のひどかった飼い主様も、先週木曜日に前岡治療院にかかると、施術の後、それまでひどかった痛みが嘘のように消失したと、嬉しそうに報告をいただきました。
飼い主様の頸部痛が治癒した翌日にかん太君が劇的に回復したのも、不思議なタイミングです。
飼い主様の喜びがこちらにも伝染して参りまして。思わず涙がこぼれそうになるくらい嬉しかったことでした。
かん太君の症状については、もう少し同じ内容で投薬を続けてから、胸部エックス線検査とかを試みてみようかとお伝えしました。
そんなことで、今日は嬉しい報告でありました。
かん太君と飼い主様についてはいつまでも元気で長生き出来ますように。
ではまた。