兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2012 7月 30
院長ブログ

日別アーカイブ: 2012年7月30日

07/30 老いた犬猫のハエウジ症

犬も年老いて来ると、何かと機能が衰えて、自分の身を守ることが出来なくなるものです。

その結果の典型的な例が、見出しの老犬や老猫のハエウジ症です。

これは、老衰とか重度の疾患で動けなくなった犬猫に、キンバエとかクロバエが卵を産み付けることにより、ハエの幼虫が炎症などのために浸出液で濡れている皮膚や、褥瘡や傷の周囲及び傷の内部、鼻、眼、口、肛門周辺からそれらの天然孔内に湧くように発生する現象です。

生きながらにハエのウジに喰われるという感じでしょうか?

ハエウジ症の対策は、まず動物を清潔でハエの飛んで来ない室内に移動させ、毛刈りや洗浄によってハエウジを除去し、傷については壊死組織を除去して消毒剤で殺菌した上に、細菌培養と抗生物質感受性試験に基づいて適切な薬剤で感染のコントロールを行ないます。

今回紹介するチチちゃんは、飼い主様が異変に気付いてすぐに連れて来られたのですが、もう既にハエウジが湧き始めているところでした。

左胸の横側の皮膚に穴が開いていたのと、前胸の皮膚が化膿性の皮膚炎になっていて、そこにハエウジが湧いていたのです。

全身の毛を刈り、ウジを全て除去して、傷からの分泌液を培養した結果から、エンロフロキサシンとセファレキシンの2剤を組み合わせて、治療を行ないました。

本日で、入院7日目になりますが、皮膚の炎症も大方治まり、開いていた穴も治りつつあります。

チチちゃんの全身状態も適切な温度管理と投薬、食事によって見違えるように改善しております。

飼い主様は、室内でチチちゃんを管理出来るようにリビングとかいろいろ配置換えをしているそうです。

私も協力したいと思い、自宅犬舎で使用していない高さ90cmのサークルをお貸しすることにしました。

退院は明日か明後日になりそうです。

07/30 エアデールテリア趾間腫瘤の摘出

7月13日と19日の2日にわたって過去の院長ブログに掲載しておりました、エアデールテリアのエルちゃんの左前肢第3-4趾間の腫瘤は、結局切除生検までやって、「悪性黒色腫疑い」という診断が付きました。

「疑い」ということは、細胞とその配列が典型的な悪性黒色腫の形態をしていないということなのでしょうね。

しかし、そこまでの診断が付いたわけですから。切除するということになりました。

切除手術は本日午後に実施致しました。

切除生検の際に大きく取りましたので、何か腫瘤が無くなったように錯覚しそうですが、皮膚が黒っぽく見えている部分はメラノーマが浸潤しているのではないか?と疑っています。

午後1時から型通りに麻酔導入をして、術野の毛刈りと消毒、術者助手の手洗い消毒術衣手袋の装着を行ない。切皮開始は50分くらいでしたか?

手術時間は切皮から縫合終了まで約1時間でした。

出来上がりの画像はこんな感じです。

足の裏の大きな肉球と人間で言う人差し指、小指を残したのは、なるべく自然に歩行出来るようにと考えたからなのですが。
もしかして、その結果として健康な部位を付けて完全切除をする、いわゆるマージンが不足して、腫瘍細胞が残ってしまう可能性もあります。

そこで、摘出した組織はもう一度病理検査に出して、完全切除が達成出来ているのかどうか?を組織学的に見てもらうことにしました。

ボトルの中に見えているのは、摘出した中指と薬指に相当する趾です。

エルちゃんは、術後はケージで休んでおります。今日の午後6時には退院出来ると思います。

完全切除が出来ていて、再発や転移が生じませんように。