兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 皮膚科
院長ブログ

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毛がもつれたチンチラ猫の鎮静下毛刈り

チンチラとかペルシャのような長毛猫は、そのゴージャスな被毛が大きな魅力ではありますが。

時として、ブラッシングやコーミングなどの被毛の手入れをひどく嫌う子が居たりして。

そんな子は、毛がひどく絡まりもつれ、フェルトのような毛玉が身体全体を覆って。それが身体を締め上げて。

苦しいばかりか、毛玉の下の皮膚に炎症が生じたりして、可哀相なことになることもあります。

今回の子も、櫛やブラシを使って被毛を梳いてやることが非常に難しい子でして。
飼い主様はむしろ熱心に取り組もうとしているのですが。

結局、毛玉が出来てしまうという感じなのです。

仕方がないので。当院にて鎮静剤を使用して、毛刈りを実施することになりました。

私が使用する鎮静剤は。拮抗薬が存在してますので、何かおかしな反応が生じたら、速やかに拮抗剤を筋肉注射して醒ましてやることが出来ます。

刈っている時は、こんな感じです。

完成に近くなって来たところです。

終了したところ。

回復室で、飼い主様のお迎えを待っています。

たかが、毛刈りと思うなかれです。長毛猫ちゃんたちにとっては、毛玉の生成は非常に深刻な問題になる可能性があるトラブルなのです。

今日も無事に終わりました。

ではまた。

 

犬の食物アレルギー性皮膚炎

今日の症例は、2年半前に他院から転院して来られたダックスフントの男の子です。現在12才と2ヶ月令です。

生後1年半くらいから、皮膚の痒みと脱毛に悩まされていて、他院でステロイド内服による治療を行なっているのだが、著効はなく何とかならないか?ということで、当院に転院されたという事でした。

当院では、まず原病をはっきりさせたいということで。細菌や真菌の2次感染を、皮膚の細菌培養と薬剤感受性試験を実施して、その結果に基づく抗菌剤の投薬をおこなったり、殺菌剤入りシャンプーで洗浄したりして、それなりの改善を認め。

麻酔下での皮膚生検と採取した材料の病理検査を実施して「萎縮性皮膚炎」という結果を得たりしたのですが。なかなか上手く行きません。

食事性アレルギーについても、その当時免疫グロブリンによらない、リンパ球に直接反応する食物有害反応(Ⅳ型アレルギー)に対応しているという加水分解タンパクを使った処方食を試していましたが、良い結果は出ませんでした。その時に使用した処方食は、唯一の弱点が澱粉質の材料としてポテトを使用しているということでした。

ただ、飼い主様は加水分解タンパク使用の処方食を与えていながら、よくよく訊いてみると、その他の食事を与えていたりしてました。

これは食事療法を試みる上で致命的な事であります。

しかし、飼い主様もその食事療法の重要性とか意味とかが実感されていなかったようですし。私の伝え方ももうひとつだったのかも知れません。

その後、一時膵炎に罹患したりして、いろいろ大変だったのですが。

基本的には皮膚の細菌培養と感受性試験を繰り返しながら、抗菌剤を使用して2次感染による悪化を防ぎつつ、ステロイドホルモンの内服を中心とした治療を続けていました。

今年になって、飼い主様が当院から遠く離れた京都府に近い田園地帯に引っ越されまして。なかなか気楽に来院することが難しくなったということもあって。

最近当院でも実施することにした、動物アレルギー検査株式会社のアレルギーの血液検査を実施したらどうですか?とお伺いを立てたところ。

やってみようという同意を得ることが出来ました。

私は以前にはアレルギーの血液検査を実施することもありましたが。送られて来る結果は解釈が難しくて却って何が何やら判らなくなってしまうようなものがほとんどでした。

また、Ⅳ型アレルギーの検査をやってくれるところは今でも動物アレルギー検査株式会社以外には存在しないと思いますし。

免疫グロブリンの検査データも免疫物質の量をしっかり量ってくれているようなので。その結果が本当に臨床に使えるもののように感じております。

動物アレルギー検査株式会社のアレルギー血液検査を実施する場合。私はまずアレルギー強度試験という項目を行ないます。
これは、血液中のリンパ球の反応により、その子がアレルギーを生じやすい状態になっているのかどうか?と調べるものです。

ダックス君の結果は以下の通りでした。

普通、アレルギーを疑って検査を始める場合。この強度試験が基準値以下の場合には、その犬の皮膚炎がアレルギー以外の原因で生じている可能性が大だと判断して、それ以上の検査を行なわずに、アレルギー以外の痒みを生じさせる皮膚炎を追求して行くことになりわけです。

上記の結果は、参考基準値以上ですから。ダックス君の皮膚炎はアレルギー性のものである可能性が非常に高いと言えると思います。

そこで、そのアレルギーがアトピーという1型アレルギーによるものか?リンパ球が直接関与するⅣ型アレルギーによるものか?アレルギーの原因物質は何か?という検査に進むことにします。

順番に見て行くと。

免疫グロブリンが関与するアレルギーは否定されております。

 ところが、リンパ球が反応するアレルギーに関しては。まず一般的な食材では。

小麦が完全に陽性であって。牛乳が怪しいという結果でした。

最後に、普通新規蛋白を売りにしている除去食で頻繁に使われている食材を調べてみると。

ジャガイモが陽性となっていて。タラが要注意です。

これで、最初に実施した加水分解タンパク食が上手く行かなかった原因がはっきりしました。あの食事はジャガイモを使用していたのであります。

この結果を飼い主様にお示しして。今後は当院がお勧めする新しい加水分解タンパクを使用した食事とお水のみで生活させるようにとお話ししました。

本日の来院では、完璧な加水分解タンパク食を使用し始めて約1ヶ月になるのですが。随分皮膚症状が改善しておりました。

画像ではまだ脱毛している場所がありますけれども。元々はこんなものではなかったですから。

後1ヶ月も続けていれば、相当良くなって行くのだろうと予想されます。

飼い主様も、血液検査で得られたエビデンスに基づく処方ですから。今回は指示に正確に従って下さっているみたいです。

ダックス君。生後1才半から今まで10年以上も痒みと闘って来たと思うと、本当に良く頑張ったことと思います。この度のアレルギーの血液検査を思い切って実施して本当に良かったと思います。

ダックス君も飼い主様も何時までも元気で幸せに過ごせますように。

 

 

免疫低下の原因は?

1週間前に来院して来たシーズ犬のランちゃんは、9才と7ヶ月令避妊済み女の子なのですが。5才の頃よりアカラスと俗に言われる犬毛包虫症に罹ってまして。他院で治療しているのですが、すっきりしないということで、当院に来られたそうです。

アカラス以外にも、緑内障、乾燥性角結膜炎、それに僧房弁閉鎖不全症も存在しているようです。

で、診察室で今までの経過を聴き取りしている際に、来院4日前にトリミングに行ってから、翌日に41.1℃の発熱が生じて、かかりつけの動物病院で胸部エックス線検査の所見から気管支炎だとの診断で、解熱剤を注射してもらったが、食欲が無いというお話しでした。

検温してみますと、体温は40℃丁度で発熱しています。

診察申込み書の記載では皮膚病の治療希望ということでしたが、発熱と食欲廃絶ということであれば、まず何よりもそれに対応して、皮膚病は食欲が回復してから取り組むべきとお話しをしまして。

採血をして全血球計数とリパーゼ、犬CRPを含む徹底的な生化学検査を行なうと共に、胸部エックス線検査を実施してみました。

その結果ですが。胸部エックス線検査では気管支炎の所見は見つけられませんでした。血液生化学検査では総コレステロール、アルカリフォスファターゼ、リパーゼ、犬CRPに高値が見られました。

膵炎の疑いがあり、アルカリフォスファターゼの高値は副腎皮質機能亢進症か?膵炎による2次的なものか?どちらかと思われます。飼い主様には膵炎の確定診断のために「犬膵特異的リパーゼ」の外注検査を東京のアイデックスラボラトリーズに依頼するのと、静脈カテーテルを前腕に留置して輸液を行ないながらの入院になることを了承していただきました。

入院初日には、座っているランちゃんの頭がフーッと左に流れるように落ちて行って、ハッと戻るような常同行動と言って良いのか?と思われるような動作がずうっと見られて、意識レベルとかにも何処か問題がありそうな感じを受けました。

体温は入院二日目から38.4とか38.3℃くらいまで低下して。皮膚炎も大幅な改善が見られます。頭部のおかしな動きも2日目には消失して意識レベルも正常になりました。

犬膵特異的リパーゼの検査結果は634μg/Lと正常値200634μg/L以下に比べて上昇が見られましたので、膵炎の存在は確定ということになりました。

しかし、3日目くらいにはランちゃんの表情からかなり体調がよろしくなって来ていると判断しまして。
膵炎対応低脂肪処方食を食べてもらおうと、目の前に提示してみるのですが、顔をそむけるような反応です。

4日目、5日目も全然食事を食べようとはしません。元々自宅でも食が細く、少しでも気に入らないと頑として受け付けないということですので。

5日目にして一旦帰宅してもらいました。

すると、翌日の報告では少しではありますが食べたということです。

膵炎は何とかクリヤーというところでしょうか?

ランちゃんのこれからですが、元々大きな問題である5才で発症した全身性毛包虫症は、免疫を低下させる何らかの基礎疾患が存在していることが多いですから。副腎皮質の機能評価とか免疫機能に関わる疾病を探って行かなければならないと思います。

当面、毛包虫症は細菌の二次感染をコントロールしながら週に1回の注射で治療して行こうと考えています。

入院中中1日のペースで実施した血液検査では、犬CRPはずっと6以上の高値を継続していましたから、内臓の疾患がそんなにひどいと思われない現状では、皮膚疾患が相当悪いのだと思わざるを得ません。何とか治してやりたいと考えています。

緑内障は、これも、大きな問題ではありますが。現在は高眼圧で苦しんでいる様子はありません。眼球が大きくなって目蓋が完全に閉じなくなってしまっていることと、涙が出なくなってしまっている乾性角結膜炎(重度のドライアイ)によって慢性的に眼がひどい炎症を起こしていることに関しては人工の涙を供給する眼軟膏を米国から輸入して持っておりますので、それを使用して。

巨大になってしまっている方の眼球に関しては、そのうちに生活の質を向上させるために摘出も考えた方が良いかも知れません。

僧房弁閉鎖不全症は、今のところそんなに重症でもなさそうなので、ACE阻害剤というお薬を継続して行けば当面大丈夫かと思います。

ランちゃん、いろいろ大変ですが。急性の膵炎をクリヤーしたこれからが本番だと気を引き締めて頑張りたいと思います。

 

03/08 犬の食物有害反応による皮膚炎

今回の症例は、1才2ヶ月令にになる黒ラブの男の子なのですが。

生後約6ヶ月令の頃より顔面、手足の先、脇の下、内股の皮膚に炎症が生じてひどく痒いという事でした。

皮膚の掻き取り試験では疥癬や毛包虫のような寄生虫は発見されません。細菌や真菌をコントロールしても、痒みは少しましになる程度で消失はしません。

しかし、試験的に投与したステロイドホルモンには劇的に反応して、痒みはほとんど生じなくなります。

従来の知識では、ステロイドホルモンが劇的に利く痒みの原因は、蚤アレルギーとアトピーという認識でしたので、おそらくアトピー性皮膚炎であろうと説明して来ました。

その後、ステロイドホルモンと抗ヒスタミン剤、脂肪酸製剤の組み合わせで治療を継続して、それなりの効果を得て来ておりましたが。

若い犬でもあり、今後の長い治療生活の事を考えると、一度血液検査で詳しくアレルギーの状態を確認したいという飼い主様の考えもあって。
動物アレルギー検査株式会社のアレルギー検査を受けることにしました。

この検査は

1、アレルギー強度試験というアレルギーの強さを評価する検査。

2、アレルゲン特異的IgE検査という、1型アレルギーの原因である免疫抗体の1種のIgEがどんな種類の抗原に対して造られているのか?という検査。

3、リンパ球反応検査という、確かⅣ型アレルギーだと思うのですが、リンパ球が直接食べ物に反応して生じるアレルギー反応がどんな食物に対して生じるのか?という検査。

の3つの検査から成り立っております。当然そのどれかをピックアップして行なうことも可能でして。アレルギー強度検査だけを先に実施して、現在生じている皮膚炎がアレルギー性であるということを確認してから、2、3に進むやり方でも良いのですが。

どうしても、検査の精度を上げるためには、ステロイドホルモンを打ち切って4週間から6週間は経ってから検査をすることが望ましいために。

黒ラブちゃんの飼い主様は、投薬中止の期間を少しでも短くして、ワンコが苦しむ時間を短くしようと考えられてか、3種類の検査を一気に行なうことを希望されました。

これらの検査において動物病院ですることと言えば、採血をして、血清を少量と、全血を試験管に2本とを動物アレルギー検査株式会社に冷蔵宅急便で送るだけです。

それで、9日かかってファクスで送られて来た検査結果ですが。

アレルギー強度試験は、試験に使用したリンパ球の45.6%が反応したという事で、2歳未満の子が16.3%以上反応すれば陽性という事ですから。
この黒ラブちゃんの皮膚炎はアレルギー性のものであると言って良いということになります。

次に、アレルゲン特異的IgE検査の結果ですが。私の予想とは全く異なっていました。
どの抗原に対しても、アレルギー反応が生じるレベルまでにはIgEは産生されていなかったのです。


最後に、リンパ球反応検査の結果が帰って来ました。

ここでは、牛肉、豚肉、卵白、小麦の4種類の抗原に対して、リンパ球が強く反応するという結果が得られました。


以上の結果から、黒ラブちゃんの皮膚炎はⅣ型アレルギーであり、その原因物質は、牛肉、豚肉、卵白、小麦の4種類の抗原が関与している可能性が高いということが言えると思います。

ただ、リンパ球反応試験では、一般にアレルゲン除去食に使用されている蛋白については実施していません。

黒ラブちゃんの飼い主様には以上の事を説明させていただき。加水分解蛋白質を使用したアレルゲン除去食を処方すると共に、加水分解蛋白の効果が表れるまでの約1ヶ月間はステロイドホルモンなどの抗アレルギー剤の投与 を継続することにしました。

後は、その効果を判定するだけなのですが。

今回の検査では、生き物の検査には珍しいくらい綺麗な結果が得られておりますので。それが実際の生体での治療とどう結びつくのか?大きな関心を持って見守っているところであります。

なお、病変部の画像は、飼い主様に提供をお願いしておりますので、しばらくお待ち下さい。

 

01/13 皮膚の痒み

2才を過ぎたばかりのイエローのラブラドール女の子の話しですが。

昨年から微妙に身体の痒みを訴えるようになりまして。手足の先とか耳の付け根とかを掻いたり咬んだりしていました。

痒みの診療は、皮膚の寄生虫(疥癬、ニキビダニ、蚤)、細菌感染症、真菌感染症などの痒みを引き起こす「治る」病気を順に除外して行って。

「治る」原因が除外されたら、ステロイドホルモンを投与してみて。

ステロイドホルモンで痒みが劇的に消失するようであれば、初期のアトピー性皮膚炎の可能性がかなり高くなるし、痒みがある程度ましにはなっても消失はしないということであれば、食事性アレルギーの可能性が高くなるわけです。

食事性アレルギーの場合、免疫グロブリンの作用による真正の食物アレルギーと、リンパ球の反応による食物有害反応とに分かれるらしいのですが。
飼い主様とワンちゃんにとっては、何かを食べると皮膚が痒くなるということでは一緒であります。

このラブちゃんの場合、皮膚に住む細菌を駆除する抗生物質も細菌培養と薬剤感受性試験を行ないながらいろいろ試しましたが、抗生物質で痒みが改善することはありませんでした。

真菌培養の検査では、ダーマキットという皮膚糸状菌の検出によって培地が赤変する培地で、それなりに赤くなるという結果が得られまして。

3本並んだダーマキット培地の真ん中がラブちゃんの検体で。左が真菌性皮膚炎と治療によっても確定した子ので、右が多分違うだろうという結果です。

皮膚の細菌や真菌を殺菌するシャンプー剤と抗真菌剤の内服も試みましたが。やはり効いてくれません。

皮膚の寄生虫は、2回は皮膚掻き取り試験を実施しました。これは皮膚をメスの刃とか、鋭匙で削り取って、薬品でその皮膚のサンプルを溶かして、顕微鏡で観察するという検査ですが。

ラブちゃんの掻き取りの検体からは寄生虫は検出されませんでした。

掻き取り試験の場合、完全な除外診断にはなり難いという特性はありますが、2回の掻き取りで陰性ですから、一応その結果は考慮しました。

残るはアレルギーか?という段階になって、ここで試したのが、理研ベンチャー企業によってここ数年前から行なわれているアレルギーの血液検査です。

動物アレルギー検査株式会社の提供する血液検査には、環境中の抗原とか食事中の蛋白に対する血液中の免疫抗体の有無を見る「アレルゲン特異的IgE検査」と、食事内容がリンパ球に及ぼす影響を見る「リンパ球反応検査」それに、体内でがアレルギー反応を生じているのかどうか?という事実を判定する「アレルギー強度試験」の3種類の検査項目があります。

飼い主様と相談の上、まずアレルギー反応が体内で生じているのか?生じているのであればどれくらいの強さなのか?ということを判定するために、「アレルギー強度試験」を実施してみようということになりました。

結果は、参考基準値という、昔は正常値と称していた数値の範囲内に収まりました。

ただ、年齢が2才以下と以上とで、参考基準値が2倍近く違うのがどうなんだろう?という疑問が残ります。ほんの4ヶ月以前にこの検査を実施して同じ数値が出れば、アレルギーですよという話しになるわけですから。

しかし、グレーゾ-ンはそれとして、とりあえずアレルギーを疑わないことにしようと判断して。

痒みを生じる要素を再度見直すことにしました。

その一つが、犬の皮膚にトンネルを造って棲んでいる犬疥癬虫を駆除する注射の実施です。
私は犬疥癬を駆除するに当たっては、注射剤を使用し、週に1回合計3回の注射を実施しています。
この注射は非常に強力でして。疥癬が居れば必ずと言って良いほど駆除が出来ます。

ただし、注射で死んだ疥癬の虫体が生きている時よりもはるかに強力なアレルゲンとして皮膚に作用するということで、診断が中っていて注射が効いていても、一時的に痒みが倍増することがあると言います。

飼い主様にはその旨をお伝えしながら、注射を実施したところ。 3回目の注射を打つ頃になると、それまで大変だった痒みが劇的に改善して来ました。

現在は足先の僅かな痒み以外はほとんど問題無いということであります。

彼女の結果は「疥癬」ということになりましたが。疥癬が何処で感染したのか?判りません。
ただ、疥癬の原因のダニは犬だけでなく狐や狸も感染していて、犬の感染源になることもありますので。あるいはそんな野生動物由来の疥癬だったのかも知れません。

何はともあれ、ラブちゃんの苦痛が軽減されて良かったと思います。

12/01 猫の耳疥癬

午前診に来院されたスコティッシュフォールドの男の子ですが。4月生まれですから生後7ヶ月ということになります。

お家に来たのは9月ということです。10月から耳が汚いのに気が付いて、飼い主様は気になっていたのが。グリーンピース動物病院のHPを見られて来院することにしたとのことでした。

早速耳の中を観察してみますと、黒い、比較的乾燥した耳垢が大量に存在しております。

綿棒で探って耳垢を掘り出し。採取した耳垢を顕微鏡で観察してみました。この耳垢検査はちょっと耳垢が多いような外耳炎に対しては、なるべくルーティンで実施した方が良いと思います。

すると。居ました。

耳疥癬とか耳ヒゼンダニいうダニの一種です。犬や猫の耳に寄生するとひどい外耳炎を引き起こして、対応せずに放置していると、耳がボロボロになって行きます。

耳疥癬の治療は、即効性のある注射薬でまず殺虫を行なって。同時に耳の炎症を抑えるための耳掃除と点耳薬の使用で対応します。

猫ちゃんと一緒に写っている箱がその注射薬のパッケージです。牛や豚の寄生虫駆除薬を、獣医師の裁量により目的外使用しております。

注射は週に1回のペースで3回実施します。1回目の注射でほとんどの成ダニが死滅するはずですが。その後卵から孵化して来ますので。その幼虫を完全に殺滅させないと、また再発する可能性ありです。

耳掃除と点耳薬の使用により、耳は随分と綺麗になりました。

でも、こんな病気だったら、比較的気が楽ですね。基本的に治る病気ですから。

末期の悪性腫瘍とか、高齢動物の腎不全とか、認知症とか、寝たきりになって褥瘡でボロボロとか。

治る見込みは無いけれども。治らないでもちょっとでも楽に出来ないかと一生懸命に治療しなければならない子ばかり診ている時に、こんな簡単と言えば語弊があるかも知れませんが。治る見込みの子が来ると、どこかホッとしている自分に気が付きます。

11/11 チンチラ猫の真菌性皮膚炎?

11月2日に、久し振りに来院のあった1才になる去勢チンチラ猫のシエル君ですが。

両側足底部という比較的珍しい部位に皮膚炎が出来ていまして、化膿していました。

細菌培養と抗生物質感受性試験は実施したのですが。ちょっと気になりましたので、真菌培養の培地であるダーマキットという培地を使用して、炎症部位の毛を材料にカビの培養も実施してみました。

細菌培養と抗生物質感受性試験は、普通翌日には結果が出ますので、その結果に基づいて細菌を殺すお薬の投薬を9日間ほど実施してみました。

その結果は、それなりに治ってはいるのですが。どうもその治り方が期待したほどでもないという感じです。

検査結果が出るのに少々時間のかかるダーマキットの培地を確認してみると、カビがしっかり生えていて、そのカビの周囲の培地の色が赤く変化しています。

そうなのです。ダーマキットでカビを培養して、カビが生えた上に培地の色が赤変した場合、生えたカビには病原性があると考えて良いのです。

その結果から、カビを殺す内服薬と、カビを殺す作用の強いシャンプーを処方しましたが。さて、どうなりますか?

一応獣医としては良い結果が出ることを期待しております。

 

 

10/21 コカプーの外耳炎と皮膚病

今日で来院3回目のアメリカンコッカースパニエルとトイプードルのミックス、いわゆるコカプーの、9才になる去勢済み男の子の話しです。

約1年前から、皮膚病と外耳炎の治療で、さる大病院にかかっていたのですが。

随分と悪化しているように思われるので、当院のHPを見られて転院して来たということでした。

治療に際して、細菌培養と薬剤感受性試験などを行なって来たのか?と訊けば。そんな検査はしたことが無いとのことであります。

皮膚病なんか、よく判らないながらにセファレキシンというお薬を内服した時に、2週間でほとんど全快という感じにまで回復して。中止したらまた調子が悪くなり。慌ててお薬を再開したら、今度は全くと言って良いほど利かなくなってしまったという話しでした。

視診してみると、皮膚も好い加減ひどい膿皮症になっていますが。最悪なのは耳で、耳道がひどく腫れて、分泌物もジュクジュクしています。

ここは何とか頑張って治して喜んでいただきたいところではありますが。耳道軟骨を触診してみると、異常にカチカチに硬くなってしまっています。慢性炎症が行き着くところまで行って、耳道軟骨にカルシウム沈着が生じて、骨化してしまっているのかも知れません。

飼い主様には、耳道軟骨が骨化するまで行っている外耳炎は、外科的に最悪は全耳道切除までやらないと完全治癒は望めないかも知れませんとお伝えして。自分のところで何処まで治ってくれるのか?一応頑張って見ましょうというお話しをしました。

コカプーちゃんにまずやったことは。皮膚と耳道と別々に細菌培養と薬剤感受性試験を行なうということです。
CTのある大きな動物病院の獣医さんから見ると子供だましのような簡単な検査ではありますが、外耳炎とか皮膚疾患には、実はこの検査が最も大きな武器となる可能性のある、私にとっては最も大切な検査なのであります。

上の画像が翌日に判定したその結果であります。

セファレキシンは、治療歴からも明らかですが。全然利かなくなってしまっていました。耳の培養をしたシャーレに生えている菌は、緑色の色素を分泌しておりますので、性質の悪い緑膿菌という薬剤耐性菌であります。

その結果から、使用する薬剤は、内服ではミノサイクリン、点自はフラジオマイシンというお薬を選択しました。

次に実施したのは、血液検査です。この年齢になって急にそんな感染症にやられて、通常の治療で悪化の一途をたどる場合、もしかすると基礎疾患として何か?免疫機能を低下させるような全身性の病気を発病している可能性があると考えるからです。

しかし、血液検査では特に免疫機能を低下させるような疾患は見つけることが出来ませんでした。

そういうわけで、治療開始して1週間が経過した本日。再来院したコカプーちゃんは、嬉しいことに皮膚も耳もびっくりするくらい改善していました。

画像ではっきりとは判らないかも知れませんが。耳道の腫れがすごく改善しておりまして。耳道の中を外から覗き込むことが可能になっているのです。

耳道を触診してみると、あれほど硬かった耳道軟骨が柔らかくなってまして。あの硬さはカルシウム沈着ではなくって単なる腫れによるものだったんだなと思われました。

皮膚の状態も、この1週間でほとんど大丈夫か?と思われるくらいに綺麗になっていました。

しかし、本当の闘いはこれからかも知れません。

もう1週間今までと同じ投薬を続けて。来週には念のために再度細菌培養と薬剤感受性試験を実施して。本当の意味で完全治癒に持って行けるように、気を引き締めて治療をして行きたいと考えております。

グリーンピース動物病院は、CTやMRIも無く。院長が飼い主様と患者様を裏切ることが出来ない性格のために代診を置くことも無い、ある意味ショボぃ小さな動物病院ではありますが。
総ては飼い主様と患者様の安心と幸せのために気合いを入れて日々の診療に打ち込んで行きたいと思って頑張ります。

ではまた。

08/25 セキセイインコの疥癬

どうもここ数日ブログ向きの症例が無いのですが。

今日は犬でも猫でもない鳥の病気をひとつ。

午前診に来院のあった、セキセイインコです。

大きめのケージで2羽飼育されているのですが。青い子の方が上下の嘴がひどく変形しています。嘴の根元の蝋膜という部分とか、口角の皮膚にモロモロの組織が造成しています。

画像は、処置後の物ですから、はっきり判らないかも知れませんが。

 嘴を整形する前に画像を撮影すべきでしたね。

このような嘴の変形とか蝋膜や口角皮膚の過形成は、鳥疥癬に特徴的な病変です。

飼い主様にその旨説明して、疥癬虫を殺す内服薬を調合し、それから鳥を捕まえて、嘴の整形と調合した内服薬の経口投与を行ないました。

一緒に暮らしているもう1羽のセキセイインコも、ごく軽度ではありましたが、嘴の変形が始まりかけていました。

こちらも内服薬を経口投与します。

お薬の投与については、飼い主様に自宅で出来るかどうか?お訊きしましたが。どうも自信が無さそうでしたから。
今後は、7日に1回のペースで来院していただいて、お薬を投与することにしました。

その子によってもいろいろでしょうが。何週間かお薬を続けていると綺麗に治って来ると思います。

疥癬もひどくなると足の指が落ちたりしますが。今回はそこまでひどくなくて良かったです。

鳥疥癬、久し振りに診察しました。

08/02 ミニチュアブルテリア若犬の毛包虫症

今年1月29日生まれで、6月終わり頃に去勢手術を行なったミニチュアブルテリアの男の子の話しですが。

7月26日に首の皮膚が痒くなったということで来院されました。

全身の皮膚を診てみると、首の後ろと左側面、左手の甲、右前腕後ろ側、右の内股に脱毛とその部分の発赤が見られました。

これだけの所見では、細菌感染とか真菌感染、寄生虫疾患やアレルギーなどの鑑別は正直難しいです。

とりあえずになりますが、可能性の大きな順番から、細菌感染や、犬種的にマラセチア感染あたりを疑って、セファレキシンという抗生物質の内服とマラセブシャンプーによる薬浴を1週間実施することにしました。

1週間後の8月2日、再来院したのを診ると、脱毛部の赤味は、部分的には改善されていましたが、改善していない場所もありますし。皮膚の痒みは相変わらずだということでした。

この時点で、アレルギーも疑ったのですが。それ以前に除外しておくべき疾患として、皮膚に住む毛包虫とか疥癬虫のようなダニの感染があります。

脱毛部の皮膚の表面を鋭匙で掻き取って、それを10%KOHとDMSOという薬剤で溶かして顕微鏡で観察するという、「皮膚掻き取り試験」を実施しました。

画像に見られる細長い虫が毛包虫(アカラス)というダニの一種です。

毛包虫は、普通に健康な犬の皮膚にごく少量寄生しているのが普通なのですが、このように脱毛や痒みを引き起こすほど増殖するのは、動物の免疫機能が不十分な場合に見られると言います。

若い犬が一過性に毛包虫症にかかるのは、時々見られることで、特にブルテリアとかのシングルコートの皮膚がデリケートな子に頻繁に見られるように感じますが。柴犬やボーダーコリーのような犬種でも見たことはあります。

若年性の毛包虫症は、大概は治療を施せば一過性のものに終わることがほとんどですが。
要注意なのは成犬になって、それも6才とか7才以降の中高齢になって発症する毛包虫症です。

中高齢の犬の毛包虫症を発見した場合には、必ず副腎皮質機能亢進症とか悪性腫瘍とかの犬の免疫機能が低下している原因を調べる必要があります。

毛包虫症の治療法ですが、ドラメクチンという抗生物質の一種を毎週1回、計8回皮下注射する方法とか、アミトラズという薬品での薬浴とかの方法があります。

ミニチュアブルテリアの飼い主様は、今回はアミトラズ薬浴を希望されました。薬浴はご本人が実施するのを前提にしておりますので、薬浴のやり方を説明してアミトラズの原液を1回分だけ処方しました。

アミトラズ薬浴は、最初の数回は週に1回。治療効果がはっきりと現れれば隔週に1回のペースで実施して。

最後に2回か3回皮膚の掻き取り試験で陰性が続いたらお終いにするようにしております。

ブルテリ君、一過性の疾患で済みますように。