もうすぐ11才になるエアデールテリアの男の子の話しですが。
5月21日に、6ヶ月くらい前から左胸の皮膚の腫瘤が自壊してずっと気になるのか?舐めたり咬んだりしているということで相談されました。
針吸引&細胞診をすることと、自壊部分から出る膿の細菌培養と薬剤感受性試験を実施して、抗菌剤を投与しました。
細胞診の結果では、良性の皮膚腫瘍であろうということでした。
しかし、薬剤感受性試験に基づいて利く薬を投与しているのにも関わらず感染のコントロールが出来ません。膿はずっと出続けています。
どうもおかしいな?と感じておりましたが。飼い主様は膿が出続けて生活の質がかなり損なわれていることが可哀相に感じられたようで。
摘出を希望されました。
この子は以前に肝機能障害を患ったことがありましたので。術前検査として全血球計数、血液生化学検査ひと通り、胸部エックス線検査、心電図検査を実施します。
やはり、予想通りGPTが405U/L GOTが50U/L ALPが1272U/L と肝障害が存在しておりました。
一応、幹細胞保護のお薬を2週間内服させてもう一度血液検査を行なうと。
GPTが166U/L GOTが31U/L ALPが882U/L とかなり改善しました。
2回目の血液検査から6日後に手術を実施しました。
高齢の子とか、体力的に不安のある子については、手術当日朝一番にお預かりして、午前中は静脈カテーテルから輸液を行なうことにより体調を整えるのですが。
エアデール君、暴れて静脈輸液を行なうことは適いませんでした。
午後1時頃より麻酔導入して、術野の毛刈り消毒、術者助手の手洗い等基本通りの手抜き無しの手順で進めて行きます。
腫瘤周辺の毛を刈ったところ。
術野の消毒が済んで覆い布をタオル鉗子で止めたところ。
腫瘤を切除したところ。判り難いとは思いますが、垂直方向のマージンとして、皮筋という筋肉を一枚切除しています。治療に対する反応が怪しいので、一応用心して。悪性腫瘍だったとしても後で慌てないように最大限の用心をしております。
切除された腫瘤。これからホルマリンに漬けて、病理検査に出します。
傷を縫合し終わったところです。この部分に出来た腫瘤は、比較的手術が容易です。
抜糸は術後13日で実施しました。この時に血液検査を行ないましたが。GPTは前回少し下がったのとそう変わらない数値でした。肝細胞保護剤は継続することにしました。
病理検査の結果ですが。扁平上皮癌という悪性度の強い物でした。用心のために大きくマージンを取って正解でした。
扁平上皮癌は転移する率は低いということですが。今後局所再発については注意して行きたいと思います。