ずっと以前に当院にかかっていたという猫ちゃんが久し振りに来院です。
4日前から咳とえずきとが激しくなっていて、当初は鼻水も出ていたそうです。
食欲は、食べてはいるけれども幾分減少傾向。
お尻で体温を測ってみましたが、38.7℃と平熱です。胸部聴診でも、心音呼吸音共に特に異常な音は聴こえません。
猫風邪にかかっているかも知れませんねとお伝えして、インターフェロンの注射をお勧めして、同意を得ましたので注射を実施して。
帰宅後に内服させるようにお薬を調剤したのですが。どうして内服させるのか?判らないということでしたので。
最初の投薬は院内で私が説明しながら実施してみせることにして。
猫の口を大きく上向きに開けて、えっ?と思いました。
咽喉の奥に黒い細い異物があるのに気が付いたのです。
もう一度、口を開けてみて、やはり異物だということを確認して。その旨を飼い主様にお伝えして。
外科用の鉗子を準備して、異物を除去すべく試みたのですが。さすがに抵抗されて叶わず。
深い鎮静、あるいは軽い麻酔が必要であることをお伝えして、同意をえまして。
拮抗薬があるので比較的覚醒させやすいタイプの鎮静剤を筋肉注射で投薬して。約7分後に意識朦朧として抵抗出来ないことを確認しつつ。口を開けて鉗子を使用して異物を取り出しました。
異物は、糸付きの縫い針で、先端が折れてました。
異物さえ取り出せばもう大丈夫だと判断しまして。拮抗剤の注射により猫ちゃんは無事に覚醒します。
今回の症例は、先入観による診療が如何に危ういかという良い例だったと思います。
初診で異物に気が付かなかったら、いずれは検査により発見されたとは思いますが。発見まで時間が長引くとそれだけ猫ちゃんは苦しむわけですし。飼い主様も心配だったと思います。
ホッとしたというのが正直なところでした。
どんな些細な症状の子でも、大したことはなかろうと嵩をくくったり軽くみたりしないで、真摯に診療に取り組んでいかなければなりませんね。