兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 12/18 チワワちゃんの停留精巣
院長ブログ

12/18 チワワちゃんの停留精巣

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先月にシニア検診を受けられた、7才8ヶ月令になるチワワの男の子ですが。

停留精巣が見つかりました。

停留精巣については、HPの診療方針に記事を掲載している通りでして。正常に陰嚢に降りて来ている精巣に比べると約10倍の確率で腫瘍化し、出来た腫瘍のかなりの物が転移を起こす悪性の物であると言われています。

飼い主様にはその旨報告致しまして。本日去勢手術を実施することになりました。幸い精巣が停留している部位は、腹腔内ではなく鼠蹊部皮下ですから、手術としては比較的簡単な部類に入ります。

お昼過ぎに麻酔導入を行ない、気管挿管、各種モニター、静脈輸液と手抜きをせずに安全な麻酔を実施します。

画像の赤い矢印の部位に精巣が停留しています。コントラストのせいで見難いかも知れませんが。皮膚が少し膨隆しています。

麻酔導入が出来ると、術野の毛刈り、消毒、術者の手洗い消毒術衣手袋の装着と進んで行って、やっと切皮にかかります。

左右の停留精巣の上の皮膚を切皮して、電気メスを使用して精巣を総漿膜から外に露出します。

小型犬ですから、精索と血管を一緒に合成吸収糸で結紮して切除します。結紮は必ず2回行なって、万が一解けることの無いよう事故防止に努めます。

左右精巣が摘出された後は、皮下織、皮膚の順に縫合して行きます。左側の皮膚縫合が済んで、右側の皮膚縫合に取り掛かるところです。

手術が終わって覆い布を取り除いたところです。普通の去勢手術であれば、陰嚢前方の皮膚を縦に一つだけ傷が出来るだけですが。この度の手術では7左右の停留精巣の上を2ヶ所切っています。

術創の上からプラスチックの創傷保護膜を張り付けたところです。細菌や汚物の侵入を防ぎ傷が蒸れません。

麻酔から醒ます前に、静脈輸液で使用した乳酸リンゲル液を皮下輸液に切り替えて、術後の脱水と腎不全を予防します。

その後麻酔から醒まし。回復室で数時間様子を観察して、夕方には退院です。

明日か明後日に術後の全身状態と傷のチェックを行なってから、術後9日を標準として抜糸をしてお終いになります。

停留していた精巣は、高い体温に曝されていたために精子を造る機能が発達出来ず、若干小さい状態でしたが。とりあえずは腫瘍化の徴候は認められませんでした。

チワワちゃん、これで将来の疾病の危険性が一つ減ったわけです。後8年くらいは幸せに生きて行って欲しいものであります。

お大事になさって下さい。