今日のテーマは、犬だけでなく人間でもこれを見るとドキッとする人が居るかも知れません。
今年2月に13才になる男の子の柴犬のシンちゃんですが。2012年2月2日に初診で来院した時には、GPT146U/L、ALP>3500U/Lと、比較的軽度かとは思いましたが、肝障害が存在していました。
体重は14.3キロあり、ひどい肥満とは言えないものの、軽い肥満傾向でした。獣医の世界の判断基準では、ボデイコンディションスコア4というところでしょう。
来院の理由も、近医で肝臓が悪いと言われてお薬をもらったが改善しないということでした。
いろいろ検査させていただくことには了解を得て。血液検査、肝エコーをやってみます。
血液検査の結果は、上記の通りで、肝エコーでも胆嚢にスラッジは溜まっていますが、正常範囲です。
原因は判りませんが、とりあえずのお薬としてペニシリン系の嫌気性菌を殺す作用の強い抗生物質と、幹細胞を守る作用のお薬とを2剤処方しました。
飲水量が多いかも?というお話しでしたので。ACTH刺激試験を行なって、副腎の機能的なサイズを評価してみましたが、特に副腎皮質機能亢進症とまでは言えない結果でした。
翌週に、ペニスから出血があるということでしたので。エックス線検査で前立腺の腫大が見られたことから、去勢手術はお勧めしました。
ただ、ペニスからの出血は、マスターベーションに拠る擦り傷であると判断しました。
去勢手術は3月初めに行ないました。繁殖の予定の無い牡犬を、「自然が一番」という考えで不自然な禁欲生活を強いているのが大方の飼い主様の傾向だと思いますが。マスターベーションをするのも性的フラストレーションの現れだということを理解していただいてのことであります。
その後、食事療法として肝臓サポート食を食べてもらいながら、抗生物質と肝庇護剤の投薬を続けますが。GPTは正常値に下がったものの、ALPは500U/L前後を行ったり来たり。総コレステロールも高値が続いていました。
この夏には、軽度ではありましたが、熱中症にもかかったりして、さすがにウェイトコントロールにも取り組まなければなりませんよと、お伝えしまして。
8月末頃より、ロイヤルカナンウォルサムというメーカーの、消化器サポート高繊維というお食事を食べてもらうことにします。
で、気になる肝臓の数値は、肝臓サポート食と消化器サポート高繊維とを半々に混ぜてやっていて体重が14キロ台の頃までは、むしろ高値が続いていたのですが。
シンちゃんが新しい食事に慣れて、消化器サポート高繊維だけを食べるようになり、体重が13キロ台前半になった頃からどんどん正常値に近づいて来まして。
まず総コレステロール値が正常値に下がって来て、その次の月くらいからALPも正常値に近くなって来まして。
11月29日の検査ではほぼすべての生化学検査の項目が正常範囲内に収まったのであります。この時点で体重は12.8キロでして。見た目にもスリムになって健康的な外観であります。
飼い主様はえらくお喜びになっております。
シンちゃんは、年齢こそ13才とかなりの高齢ですが。最近はすごく若返った感じになっていまして。この調子だったらまだまだ数年は元気で生活出来るかも知れません。
美味しい物を腹一杯食べることも幸せの形かも知れませんが。元気でどんどん歩ける健康もまた幸せの一つの形だと思います。
そして、犬は飼い主様が与える物だけを食べて生活するわけですから。飼い主様がワンちゃんの健康に想いを致して、適切な食生活を送らせるということは、ある意味飼い主様の義務ではないか?と思う次第であります。
ではまた。