もうすぐ9才7ヶ月令になるシェトランドシープドッグの女の子の話しですが。
昨日から気分悪そうにしていて、食事も摂らないという稟告で来院されました。
連れて来られた方がその家のお嬢さんで、症状とか詳しく把握していないみたいですから。最初どの分野の問題なのか?私も正直迷いました。
身体検査を行なってみると。体温39.5℃、脈拍毎分124回、呼吸毎分56回。両眼の瞬膜突出、膿性眼脂あり。両眼共対光反射は正常。
ちょっと気分悪そうな感じです。
仕方がないので、血液検査と腹部エックス線検査を行なうことにしました。
血液検査で目立ったのは、白血球のうち細菌と闘う好中球が増加していることと、炎症マーカーのCRPが7.0mg/dlオーバーと振り切っていることくらいです。
腹部エックス線検査ではお腹の中にとぐろを巻くように太いソーセージのような構造が白っぽく見えます。
画像の向かって右側の2本の矢印の先に見えるのがその構造です。
同時に、この画像ではもうひとつはっきり見えないかも知れませんが。胃の中に異物が見えています。
とぐろを巻いている太い構造は、多分ですが、子宮に膿が溜まったものだと思います。
胃の中の異物は何なのか?不明ですが。このまま放置して置くと腸閉塞の原因になるかも知れません。
ワンコを連れて来たお嬢様に状態を説明して。腹部エコー検査を追加で実施しました。
赤い矢印の先に見えるのが、膿を充満している子宮です。子宮蓄膿症と胃内異物合併症例という診断が確定です。
そのまま左手に静脈カテーテルを留置して、乳酸リンゲルの点滴を開始しまして。午後から麻酔をかけて手術を行いました。
最初に子宮を取り出しました。正常だったらもっともっと細く短い子宮がボコボコに膨れていまして。突いてみると膿が噴出して来ました。
出て来た膿で細菌培養と感受性試験を行ないます。
次に胃を開けてみると、プラスチックの吸盤みたいな構造が出て来ました。
胃を2重に縫い合わせ。お腹を閉じて手術は終了です。
麻酔を切ってしばらくすると覚醒しましたので、気管チューブを抜いて、回復室に入ってもらいます。
多分ですが。明日の夕方には食欲も回復しますので、最短では明日の夕方に退院ということになると思います。
今回の症例のような例は、今まで何回もアップして来ていますので。目新しさも無いかも知れませんが。
繁殖予定の無い犬猫の、早期の避妊去勢手術は、その動物のいろいろな病気を予防し、性的なフラストレーションを防ぐことが証明されていて。動物愛護の観点からも強く推奨されているのが、現代獣医学の常識になっています。
この記事を読まれた飼い主様で、単に現在病気でないというだけの理由でご愛犬の避妊去勢手術をためらっている方が居られましたら。是非とも主治医に相談するようになさって下さい。
ではまた。