兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 子宮蓄膿症
院長ブログ

子宮蓄膿症

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今回の症例は、3才になるポメラニアンです。

子宮蓄膿症は、未避妊の女の子のワンちゃん猫ちゃんがかかる病気ですが。 この子は、飼い主様が子供を残したいという希望がありましたので。 避妊手術をやってなかったのです。

ただ、 飼い主様の意図に反して、妙に病気がちの体質でして。

ここ1~2年は頑固な便秘と食欲不振で、緩下剤と消化管運動促進剤を投与する治療を続けてました。

ところが、最近食欲不振の度合いがひどくなった上に元気が無くなったということですので。

心新たに、身体検査を行なってみると。 性器が妙に大きくなっていて、なおかつ下り物が見られます。

血液検査では、白血球数、特に細菌と戦う好中球の増加とC反応性蛋白の数値が高い方に振り切ってしまっています。

お腹のエックス線検査では、矢印の先に異常なソーセージ様の陰影が見られますし。

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腹部エコー検査では、そのソーセージ様の陰影は、内部に液体を貯留した管状の構造であるということが判明しました。

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これだけの証拠が揃えば。 この子の病気は「子宮蓄膿症」と言い切って良いと思いますが。

かなり怖いと思ったデータとしては。 血液を固める機能を持っている血小板の数が、1ミリ立方メートル当たり5万個台に減少しているということでした。 血小板数は、採血の時に針先が血管から外れたり、採血にひどく手間取ったりすると少なくカウントされることがありますが。 今回の採血は普通にスムーズに出来てましたから。 この数値は信頼性があると思います。

子宮蓄膿症のような基礎疾患があって、血小板数が少なくなっているような場合。 DICという血液凝固系の暴走とも言うべき致命的な状態になっている可能性が高いと思います。

DIC[で回復しない場合を考えて。 DIC[治療の奥の手ともいうべき新鮮血漿輸血とかも考慮して。 血液型を簡易キットで判定しようと試みましたが。 自己凝集反応が出現していまい。 血液型判定は出来ませんでした。

犬猫の血液型判定は、健康な時に前もって実施しておくべきものであると改めて思い知りました。

子宮蓄膿症は、状態が悪いからとか言って手術を延期したりすると、逆にますます状態が悪くなって、 結果的に死に至る症例を過去に見て来た経験から、発見したらとにかく手術して悪い臓器を取り出してしまうというのが私の考えです。

この子も、即日手術を実行しましたが。 手術の前から、DIC対策のお薬を静脈輸液に添加して持続点滴で投与しました。

 

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手術は、 過去のブログにも何回となく掲載したように、麻酔導入したら気管チューブを挿管し。 静脈カテーテルからの乳酸リンゲルの輸液。 各種モニターの装着と。 決して手抜きをせずに丁寧に準備します。

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お腹を開けると。 液体が充満した子宮が出て来ました。 超音波メスで血管をシールしながら摘出します。

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摘出した子宮ですが。 健康な子宮に比べて、長さはともかくひどく太くなっています。

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メスで突くと、イチゴミルクのような?膿が出て来ました。 この膿を材料にして細菌培養と薬剤感受性試験を行ないます。

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麻酔からは普通に覚醒しました。 一晩入院させて、DIC対策のお薬を添加した乳酸リンゲルの点滴を続けます。 翌日に食べれば回復に向かっていると判断して退院させます。

幸いなことに、翌朝食欲が回復して、与えた食事を食べてくれました。

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筒状のメリヤスを使ったシャツを着せてやって、退院させました。

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術後約9日で再来院した時には、すっかり元気になったということなので。 抜糸して今回の子宮蓄膿症騒ぎは一件落着ということになりました。

普通に回復してくれて、本当に良かったです。

今回の子は、一応繁殖予定があったので。 早期の避妊手術をしなかったために、こんな事態になってしまいましたが。
やはり、繁殖の可能性が無くなった時点でなるべく早期に避妊手術をお勧めするべきだったと思います。

ではまた。