兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 慢性外耳炎の悪化
院長ブログ

慢性外耳炎の悪化

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遠く兵庫県の東部から私のHPを見られて来院されたウェルシュテリアとその飼い主様のお話しですが。

このウェルシュテリアは、今年10才になる男の子で未去勢です。

昨年末、およそ10ヶ月前に黒い目ヤニと黒い耳垢が出て、食欲もひどく低下するような状態になったそうですが。近医にて治療し治っていたそうです。

それが、また再発したそうで、こちらに受診する11日前にやはり近医にて治療するも、2週間利くという抗生物質の注射も効を奏さず。食欲も無くなり、飲水もしないような状態になって。入院したそうです。その時には体温も40℃にまで上昇し。左耳の付け根が異常に腫れたのを切開し排膿したそうです。

しかし、切開排膿の後も全身状態は改善しなかったそうで。

そちらの獣医さんは、全耳道切除をしなければならないと説明してくれたそうですが。使用する抗生物質は、せっかく薬剤感受性試験を実施しているのにもかかわらず。明らかに利いていない薬剤を、「生体内と検査の環境とは違うから。」ということで使おうとしていたということです。

さすがに飼い主様は、おかしいのではないか?と疑問を感じられたらしく。私の動物病院を受診することにしたとのことです。

画像は、私が受診当初のを撮影し忘れてまして。飼い主様に送っていただいたものですが。受診初日の左耳とその周辺はひどく壊れていて、その付近を通っている顔面神経も侵されているらしく。眼の動きも明らかにおかしいものでした。

耳は、左右共垂直耳道はひどく石灰化しているようで。耳道は塞がっており、外から触るとカチカチに硬化しています。

切開排膿した大きな穴から滅菌綿棒をそっと挿入して材料を採取し。院内での細菌培養と薬剤感受性試験を実施しました。

翌日出た結果は、12種類調べた薬剤の内、ファロペネムとミノサイクリン、ドキシサイクリンの3種類のみがしっかりと効果ありで。フラジオマイシンがまあまあ利くというものでした。

そこで、今までの経験から、内服しても消化器症状などの障害の出難いファロペネムを内服しながら、フラジオマイシンの点耳をしてもらうことにしました。

同時に、この年齢になって急に感染に弱くなったのであれば。何らかの基礎疾患を有している可能性があると疑って。院内のスクリーニング血液検査を実施しました。

血液検査では、高コレステロール血症とアルカリフォスファターゼの軽い上昇が判明しました。

とりあえず、高コレステロール血症に対して、甲状腺の機能の検査を実施しましたが。甲状腺関係のホルモン濃度は正常でした。

残るは副腎機能の検査ですが。当初聴いていた少し大目の飲水量が、治療をしているうちにそんなにもおおくは無いという感じになりましたので。副腎機能の検査は経過をみて実施することにしました。

耳の経過ですが。感受性試験に基づいた投薬を実施したところ、来院1週間目には穴は塞がりつつあって。食欲元気さも回復して来て。

更に2週間投薬を続けたところ。排膿していた穴は完全に塞がって、元気食欲も正常に復したということです。

しかし、耳道を触診してみると、ひどく硬い状態はそのままですし。耳の穴も塞がったままです。

このままの状態で満足していると、またぞろ同じ感染が燃え上がって大変な状態になる可能性大ですから。全耳道切除をお勧めしました。

全耳道切除は、正直自分でやるには気の重い手術ですから。大阪府立大学獣医臨床センターの外科系の教授に連絡してお願いすることにしました。

飼い主様は手術に前向きですので。この11月11日に府立大学に行って、おそらく東部のCT検査くらいは実施して。後日に日を決めて全耳道切除ということになると予想しております。

全耳道切除を行なっても、鼓膜から奥の中耳内耳に問題無ければ、聴力もかなり残りますから、生活に不便は無いでしょうし。耳道を取っても耳たぶは触りませんから外見上の違和感はありません。

ミッチー君、もう一度元気になって飼い主様と幸せに過ごせるようになってもらいたいと切に願っております。