兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の ポメラニアンの消化管内異物
院長ブログ

ポメラニアンの消化管内異物

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今日の症例は、10才と3ヶ月になるポメラニアンの女の子です。

この子は6月2日に、前日から吐くようになり、食欲が低下したということで来院されました。排便はあるがやや軟便とのことでした。

飼い主様の話しを聴きながら、ワンコの様子を見ていて、カルテに記載している既往を確認して行くと、2009年に肝障害を患ったことがあります。

血液検査をすることにしました。

打ち出された結果では、総コレステロールの高値、アルカリフォスファターゼの高値、BUNとリパーゼが少しだけ高値ということでしたが、特筆すべきは炎症マーカーである犬CRPが7.0mg/dlオーバーという異常な数値です。

この時点でもっと詳しく腹部エックス線検査をすべきかどうか?ちょっと迷いました。

でも、ワンコの表情はそんなに苦しそうでもなさそうですし。

犬CRPの数値が高いのがすごく気になるので、お薬を内服させても症状が悪化するようであればすぐに来院するようお伝えした上で、とりあえずの処方として胃腸炎対応のお薬の組み合わせをお出ししました。

しかし、翌日に電話があって、症状は進行して食欲がいよいよ少なくなったこと、下痢もしていること、投薬が出来ないということでしたので、来院するようお伝えしました。

来院したワンコに腹部エックス線検査を実施してみたところ、胃の中には大量の内容物が充満しているのに、胃から後ろの腸管にはほとんど内容物が見られません。何かひどく不自然です。

リパーゼが高かったことも気になりましたので、採血して血清を東京のアイデックスラボラトリーズに送り、犬膵特異的リパーゼを測定すると共に。

ガストログラフィンというヨード系造影剤を胃チューブで胃に流し込んで、消化管造影を行ない、1時間毎にエックス線撮影を実施しました。

画像はガストログラフィン投与後16時間のものですが、液体成分はちゃんと直腸末端まで到達しているものの。胃の中の固形物は全然変化がありません。

どうもおかしいです。

そして、エックス線検査を実施しながら、念のために前腕に静脈カテーテルを留置して乳酸リンゲル液を輸液していると、ワンコは急に吐きました。

吐いた物を見てびっくりです。足拭きマットの繊維みたいな繊維の塊でした。

飼い主様に確認すると、思い当たる節があるとのことです。

これは試験的開腹をするしかないと決断し、飼い主様の了解を取り付けて、4日の午後に手術を決行しました。

麻酔導入後気管挿管をして、ガス麻酔で維持しつつ、お腹を開いてみると、やはり、吐いた物と同じ繊維製の異物が胃に充満しております。


引っ張り出してみると。結構長い繊維です。緑っぽい色でしたので、まるで茶蕎麦を吊り出したような雰囲気でした。


胃は綺麗に掃除して、2重に縫合してお終い。

でも、ここで安心してしまって閉腹するようでは、不十分です。長い繊維製の異物ですから、腸管に行って悪いことになっている可能性大です。

腸管も引っ張り出して、十二指腸から近位結腸まで丹念に探ってみますと。ありました。

長い繊維性異物が腸管に引っ掛かって、腸管がアコーディオンの襞の如くに、シワシワになっています。この状態が長く続くと腸管が切れて腹膜炎を起こして死ぬ怖れがあります。

こっちの異物は相当長かったです。腸管の切開は最小限で済みましたので、縫合も比較的楽でした。

総ての異物を摘出して閉腹完了しました。午後診開始の少し前でした。取り出した異物をワンコと比較してみると、結構沢山食べていたのにびっくりです。

その後ワンコは順調に回復して、手術2日後の本日朝から旺盛な食欲を見せてくれて、 本日夕方に退院して行きました。

本当に良かったと思います。