犬も年老いて来ると、何かと機能が衰えて、自分の身を守ることが出来なくなるものです。
その結果の典型的な例が、見出しの老犬や老猫のハエウジ症です。
これは、老衰とか重度の疾患で動けなくなった犬猫に、キンバエとかクロバエが卵を産み付けることにより、ハエの幼虫が炎症などのために浸出液で濡れている皮膚や、褥瘡や傷の周囲及び傷の内部、鼻、眼、口、肛門周辺からそれらの天然孔内に湧くように発生する現象です。
生きながらにハエのウジに喰われるという感じでしょうか?
ハエウジ症の対策は、まず動物を清潔でハエの飛んで来ない室内に移動させ、毛刈りや洗浄によってハエウジを除去し、傷については壊死組織を除去して消毒剤で殺菌した上に、細菌培養と抗生物質感受性試験に基づいて適切な薬剤で感染のコントロールを行ないます。
今回紹介するチチちゃんは、飼い主様が異変に気付いてすぐに連れて来られたのですが、もう既にハエウジが湧き始めているところでした。
左胸の横側の皮膚に穴が開いていたのと、前胸の皮膚が化膿性の皮膚炎になっていて、そこにハエウジが湧いていたのです。
全身の毛を刈り、ウジを全て除去して、傷からの分泌液を培養した結果から、エンロフロキサシンとセファレキシンの2剤を組み合わせて、治療を行ないました。
本日で、入院7日目になりますが、皮膚の炎症も大方治まり、開いていた穴も治りつつあります。
チチちゃんの全身状態も適切な温度管理と投薬、食事によって見違えるように改善しております。
飼い主様は、室内でチチちゃんを管理出来るようにリビングとかいろいろ配置換えをしているそうです。
私も協力したいと思い、自宅犬舎で使用していない高さ90cmのサークルをお貸しすることにしました。
退院は明日か明後日になりそうです。