6才6ヶ月令の屋久島犬のシマちゃんですが。
どういった原因でか?左下腹部に膨らみが目立つようになって来ました。そして、その膨らみは指で押すとお腹の中にスルスルと引っ込んでしまいます。
こんな症例は、多くの場合、外傷性腹壁ヘルニアと言って、何らかの外力により腹筋が損傷して、その傷から内臓とか内臓脂肪が皮下に押し出されて来ているのです。
飼い主様が外科的に整復するよう希望されましたので、手術で整復しました。
いつものように麻酔導入して、気管挿管、各種モニターの装着、静脈輸液と手早く仕事を進めます。
術野になる部分の毛をバリカンで刈って、 イソジンスクラブで洗い、イソジンとアルコールで消毒します。
術者は滅菌手術帽子とマスクの装着、手洗い、滅菌術衣の装着、滅菌ゴム手袋の装着を済ませて、患犬にドレープをかけた上で初めて切皮という運びになります。
切皮して皮下織を分離して行くと、すぐに腹筋の損傷部位が見つかりました。
腹膜と腹筋にきちんと糸をかけるようにして、縫合を始めます。
縫合に使う糸は、ポリプロピレンというプラスチック製の針付き糸です。これは体内で溶けたり吸収されたりすることはありません。ヘルニア整復術では非吸収縫合糸を使用するのであります。
腹膜と腹筋が縫合し終えたら、次は皮下組織の番です。こちらは吸収性縫合糸を使用して縫って行きます。
最後に皮膚をナイロンモノフィラメントの縫合糸で縫合します。私はマットレス縫合という方法を用いて縫うことが多いです。
皮膚の縫合が終了しました。
麻酔からの覚醒を待っているところです。この間に術創に外傷管理用のプラスチックフィルムを貼ったり、簡単な手術のこの子は皮下輸液を行なったりと、看護師さんたちは結構忙しいです。
術後に回復室で休んでいるところです。
覚醒も良好で、手術当日に退院して行きました。
術後は翌日に一度来院して術創のチェックとか麻酔後の不整脈の有る無しとかをチェックしまして。大抵は術後9日とか10日で抜糸をして手術は完了となります。
どんな簡単な手術でも、無事に済めばホッとします。