今日は、県西部の街で、グリーンピース動物病院から自動車で1時間強の遠いところから、ビーグル雑をお連れの方が来院されました。
このビーグル雑は、クロちゃんと言いまして。地域で増え過ぎた猪や鹿を退治するという農林業に大切な仕事をやっている名犬です。
このクロちゃんは、昨日から左耳の耳介が異様に膨らんで痛そうにするとのことです。
数年前にも反対側の右耳が、やはり耳血腫になって、それはもう少し近くの動物病院で手術によって治ったということです。
左耳は、画像のようにプックリと膨れています。
比較の対象になるように、過去に手術をして現在は正常になっている右耳の耳介も掲載してみます。
この耳血腫の原因ですが。ほとんどの場合外耳炎を慢性的に患っていて、すごく痒いので頭を激しく振ることにより、耳介軟骨が折れて出血するというのが原因なのです。
従って、その根本原因である外耳炎を治療しなければ、耳血腫そのものをいくら治療しても犬の苦しみは無くなりません。
耳血腫も早目に手術療法をするのも一つの解決方法ではありますが。最近のトレンドとして、猫インターフェロンの注入とステロイドホルモンの内服の併用で切らずに治すというやり方が取られるようになっております。
ただ、インターフェロン療法も反応が著しく悪かったり、遅かったりする場合には、手術に移行する方が良い場合もあると思います。
また、インターフェロン療法であっても手術療法であっても、外耳炎の原因である細菌とかマラセチア菌とかをコントロールしなければならないわけであります。
飼い主様には、以上のことなどをひと通りお伝えして、手術療法?インターフェロン療法?のどちらを選択されるのかをお尋ねしたところ、当面インターフェロン療法を選ばれました。
クロちゃんについては、まず耳道を滅菌綿棒で探って、細菌培養と薬剤感受性試験の材料を採取し、インターフェロンを生理食塩液で溶解して、1バイアル10万メガユニットを膨れた耳介の血腫内に注入しました。
一応、メーカーの説明書きには、初回の注入時には血液はむしろ抜かない方が良いとのことであります。
ステロイドの内服薬は1週間分、抗菌剤は培養と感受性試験の結果が出るまでの繋ぎの期間分処方してお渡ししました。
インターフェロン注入は、5日から7日毎に実施する予定です。普通だったら1回から4回の注入で治癒するということです。
クロちゃん、速やかに治りますように。