その外耳炎治療薬は、オスルニアと言いまして。 割りと最近認可された外用薬ですが。
薬屋さんの曰くは、 外耳炎を患っている子が来院したら。 とりあえず、 このお薬を点耳(耳の穴の中に注入することをこう表現します)します。 この時に耳垢とかはそんなに頑張って除去しなくても良いということです。
オスルニアを1回点耳したら、内服薬を出す出さないは別として。 患者さんをお帰しして。 1週間後に来院するまで自宅では何にもしなくても良いということです。
初診で1回点耳して1週間経過して再来院して来た時に。 再度オスルニアを点耳します。
2回目の点耳の後も、そのまま帰宅させます。
その後も自宅では何にもしなくてもよろしいとのことです。
1週間後に3回目の来院の時に、治っていることを確認して治療終了となるということです。
初めてそのことを聴いた時には、俄かには信じることが出来ませんでした。
それまでの外耳炎の治療は、最初の診察で耳垢を洗浄除去した後、自宅で毎日お薬を点耳し続けることが標準的なやり方ですから。
ものは試しにと、 外耳炎で来院して来た子に、 このオスルニアを使用してみたところ。
薬屋さんの言う通りに、 自宅で何もしなくても外耳炎は合計3回の診察で治りました。
その後、数頭オスルニアを使用してみましたが。
何頭目かに、オスルニアを使用しても治らない子に遭遇しました。
その原因を探るべく。 その子の耳垢の細菌培養と薬剤感受性試験を実施してみたところ。
オスルニアに使用している抗生物質に耐性を持つ細菌が感染しているということが判明しました。
オスルニアというお薬は。 基材やお薬の作り方に特殊な技法を用いて、耳の穴の中でお薬が長時間作用し続けるようにしたものだと思います。
使用している抗生物質が、今まで獣医療で使われて来なかった種類の物なので、最初の数例はたまたま薬剤耐性菌に出合う確率が低かっただけで。 順調に治ってくれたものの。
いつかはこのお薬に反応しない細菌による外耳炎に行き当たることは当然と言えば当然だと思います。
これはオスルニアが利かない外耳炎の耳垢の細菌培養と薬剤感受性試験の例です。 上の画像の赤い矢印の先がオスルニアに使用している抗生物質を含ませているろ紙です。
ろ紙の周辺に、点々と見えているのが細菌でして。 薬の存在に関係なく生えていることは。 その薬が利いていないということです。
これは、オスルニアが利いている外耳炎の耳垢の培養です。 矢印の先のろ紙の周辺には小さなツブツブの細菌は生えていません。
というわけで。 夢の新薬と言えども抵抗性のある細菌が原因の場合、治療には役に立たないということが判明してしまいました。
また。 これは従前からそうなのですが。 外耳炎を再発する動物は、基礎疾患としてのアレルギー体質や、免疫力低下などの素因を有しているわけです。
外耳炎の子が来院した場合には。 必ず基礎疾患の有無にも思いを致しながら診療にあたる必要があります。
ではまた。