一昨日の夜ビーグル雑の女の子の飼い主様から電話がありまして。
「草むらに顔を突っ込んで臭いを嗅いでいたら、みるみる顔が腫れて来た。」ということです。
蝮による咬傷の疑いがあるのですぐに来院するようお伝えしました。
来院して来たワンちゃんの鼻面はかなり腫れ上がっています。
2本の矢印の先がほのかに赤く染まっているのは、そこがマムシの牙が入った場所だということだと思います。
マムシによる咬傷はそれなりに件数を診ていますが。犬の場合死ぬことは滅多に無いようです。
ただ、傷が治癒した後肝機能に異常を来した症例は診ています。
実は、お守りとしてマムシの馬抗毒素血清は常備してはいます。
ただ、この抗毒素血清を注射してもしなくても、そんなに経過が変わるという感触が無かったことと。注射により却ってアナフィラキシーショックを生じる可能性があったりして。
最近はほとんど使用することはありません。
この子の場合でも。来院時そんなに全身症状が悪くないこともあって。抗生物質とステロイドホルモンの注射を行なった上で。
内服は2次感染防止のための抗生物質と、抗炎症効果を期待したステロイドホルモン、強肝作用と解毒作用を期待して甘草エキス製剤の3剤を処方し。経過が心配ならば連絡をくれるようお伝えしてお帰ししました。
私的には、この場合に最も効果を期待する薬はステロイドホルモンで。次に甘草エキス製剤です。抗生物質はあくまで二次感染防止の意味合いで使用しています。
中1日置いて再来院したのを診ますと。食欲元気さはそれなりにしっかりしています。
鼻面の腫れは少しましになっていますが。下顎から首にかけて炎症性の分泌物が溜まっているのでしょう、ブヨブヨに浮腫が出来てました。
続きのお薬を処方して。1週間後に念のために血液検査を実施する旨お伝えしました。
犬のマムシによる咬傷は、一応こんな感じで、最近はほぼ全例が無事に回復しています。
犬がマムシに咬まれても重大な結果になり難いのは、反射神経が鋭いために咬まれても瞬間で離れるために、毒の注入量が少ないということなのかも?知れませんね。
私事ですが、私の実兄はマムシを捕まえてマムシ酒を作ったりしてましたが。数回咬まれて、その都度入院して抗毒素血清の注射を受けてました。
最後の入院の際には、「次回には抗毒素血清に対するアレルギー反応で重症になるかも知れません。」と脅かされて、最近はマムシに手を出すのは止めにしたみたいです。
お彼岸の前後からはマムシの繁殖期になりまして。マムシが攻撃的になる季節に入ります。
ワンちゃんと自然豊かな環境に行く際には十分に気を付けてやって下さい。