午後診も終わりに近づいた頃、もうそろそろ閉める準備をしようと思いつつある時間に、チワワちゃんの来院がありました。
約1時間前に2センチ角に切った生のジャガイモを飲み込んだのだけれど、それから急に気分悪そうになって、2回ほど泡を吐いたとのことです。
その後もまだ気分悪そうなので連れて来たということでしたが。
飼い主様に抱っこされたチワワちゃんは、そんなに気分悪そうでもなさそうです。
しかし、こんな時に事態を甘く見ていると、危機の見落としという最悪の事態に陥る可能性がありますから。
2センチ角切り生ジャガイモということであれば、異物は食道内に停留している可能性があること。
異物を確認するためには、造影剤を口から飲ませてエックス線検査をする必要があること。
上記2点を飼い主様に説明させていただき、了解を得た上で、ヨード系造影剤のガストログラフィン5ミリリットルを注射器を使用して飲ませてからエックス線写真を撮影しました。
食道内に角ばった物体が、特に側方から撮影した写真ではっきりと確認出来ると思います。
さて、この異物をどうして処理したものか?
プロポフォールという短時間作用型の安全な静脈麻酔を使用して眠らせて置いてから、胃カテーテルで胃内に押し込むことにしました。
左前肢の静脈にカテーテルを留置して、プロポフォールを適量ゆっくりと注入すると、チワワちゃんは穏やかに意識を失います。
太いのと細いのと、2種類準備してあるゴム製の胃カテーテルのうち、細いのを用意して。
それをチワワちゃんの口から挿入し、押して行きます。
勿論、口から胃までの距離を測って、カテーテルのどの部分まで入れれば胃に到達するのかは、挿入前に実施してます。
ここらが異物か?という辺りで、少し抵抗が感じられましたので、ひどく乱暴にならない程度に押してみます。
ポン!!という感じでカテーテルが胃の中に入りました。
もう1回カテーテルを引いて押してみます。
ポン!!の感覚は今度も感じられました。カテーテルの先端が噴門という胃の入り口を通過する際にこんな感じになるようです。
胃カテーテルを抜いて、確認のためのエックス線検査を行ないました。
食道内の異物は消失しています。
プロポフォールの麻酔は、約15分で醒めますので、立ちあがって歩くようになった時点で帰ってもらいました。
翌朝に状態観察のために来院していただく予定ですが。もう大丈夫かな?と考えています。
ただ、2センチ角の生のジャガイモが、胃の中でどれくらいこなれてくれるのか?まさかトウモロコシの芯のようにずっと形を保って、腸閉塞の原因にはならないとは思いますが。
そこのところは、僅かながら不安もあります。